連載、「こんなとき、どうなる? 働き女子の法律相談所」は、みなさんの日々の暮らしの中での素朴な疑問、質問、相談などにお答えする働き女子のための法律相談所です。今回は会社の健康診断。婦人科系の診断は必ず受けなければいけないの? についてアディーレ法律相談所の正木 裕美先生が答えてくれました。

Question

 先日、会社の健康診断を受けてきました。子宮頸がん検診や乳がん検診といった婦人科系の健康診断も含まれていたのですが、子宮頸がん検診は男性経験のない場合不必要だと聞いたため、自身で病院に連絡をして婦人科系の検診を省いてもらいました。その後、検査結果が会社に届いた際、上司から検診を受けてない事を指摘され、再度受けてくるように言われましたが、受ける必要はないと思っています。こういった婦人科系の健康診断は会社が指定した場合は受けなければいけないのでしょうか。(30代・女性)

 Answer

 自分の命を守るためにも、婦人科系の検診をちゃんと受けておくことは大切でしょう。しかし、会社の健康診断は毎年行われるがゆえ、デリケートな婦人科系検診を受けてくるよう言われても、相談者の方と同様必要がないと感じたり、心理的な抵抗がある方もいるのではないでしょうか。

 そもそも労働安全衛生法という法律で、会社には健康診断の実施が義務づけられるとともに、労働者も健康診断の受診が義務づけられています。ただ、労働者が医師を選択する自由も保障されていることもあり、会社の健康診断を受けないときは、自分で医師を選んで健康診断を受け、診断結果を会社に提出しなければなりません。

 しかし、法律で実施や受診が義務づけられている定期健康診断(法定検診)は、診察、X線、尿検査、心電図等の一般的なものです。今回上司に受けてくるように言われた子宮頸がん検診や乳がん検診といった婦人科検診はこれに含まれていないので、法律上は健康診断の実施も受診も義務づけていない法定外検診にあたります。

 というと「法律で義務がないなら拒否しても大丈夫だよね」と思うかもしれませんね。でも、そうとは限りません。というのも、会社にとって労働者が病気になった場合に、その病気が会社の業務のせいでなったものかどうかは、その労働者の対応方法を考えるうえ等において重要な関心事です。単に会社が推奨しているだけなら受診義務はないものの、特定の健康診断を受けさせることについて合理的かつ相当な理由があれば受診義務があるとした判例があります。また、就業規則等で受診義務を定めた上、拒否に対して懲戒処分も規定していると、懲戒処分を受けることもあります。

 今回は、会社の規則等は不明ですが、一般には子宮頸がんや乳がんと業務との関連性はなく、子宮頸がんは男性経験のない人の発症はかなり稀なようです。相談者の方が体調不良を訴えている状況でもないですし、受診義務がないと判断される可能性は高そうです。ただ、受診義務の判断などのため、場合によっては会社に受けなかった理由を説明しなければいけないこともあるでしょう。

 会社の検診では婦人科系は希望者を対象となっていることもありますが、女性の気持ちに配慮して欲しいものですね。会社での受診には抵抗があっても、早期発見が重要と言われる婦人科系疾患はいろいろありますので、定期的な健診は大切です。自治体や社会保険で安く検診できることもあるのでチェックしてみてくださいね。

この人に聞きました
正木裕美
弁護士(愛知県弁護士会所属)
正木裕美(まさき・ひろみ)

男女トラブルをはじめ、ストーカー被害や薬物問題、ネット犯罪などの刑事事件、労働トラブルなどを得意分野として多く扱う。身内の医療過誤から弁護士の道へと進む。2012年には衆議院選挙に愛知7区より日本未来の党の公認候補として出馬し、「衆院選候補者ナンバーワン美女」とインターネットや夕刊紙で大きな話題を呼んだ。2015年にアディーレ法律事務所へ入所。ブログ「弁護士正木裕美のまっさき通信」も更新中。

写真/kiko(PIXTA)

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