気温が下がると、ノロウイルス・インフルエンザなど感染症の季節がやってくる。例年、ノロウイルスによる感染性胃腸炎は11月~1月に多いうえ、今年は大流行した2006年以来のウイルス変異が報告されており、大流行も懸念されている。今年のインフルエンザの傾向も含め、感染症の予防と対処法を聞いた。

今シーズン流行が予測されるノロウイルスは“新型”

 日本でのノロウイルスによる感染症は、食品衛生法に基づく食中毒と、感染症法に基づく感染性胃腸炎の集計の2つで集計されている。過去の食中毒発生状況(表1)を見ると、2006年の大流行では食中毒患者数全体の約7割がノロウイルスによるもので、その後も毎年、食中毒の原因物質の1位を占めている。

2006年にはノロウイルス患者数は2万7616人で、食中毒患者数全体の70.8%を占めた。昨年2014年でも患者数は1万506人、54.3%と多い。
2006年にはノロウイルス患者数は2万7616人で、食中毒患者数全体の70.8%を占めた。昨年2014年でも患者数は1万506人、54.3%と多い。

 また、感染性胃腸炎の病原体となるウイルスにはさまざまな種類があるが、その多くがノロウイルスによるものといわれている。今年の感染性胃腸炎発生状況は、一つの医療機関あたり、1週間に5人程度という状況だが、今年もこれから増加すると見られている。

 さらに、今シーズンは2006年以来のウイルス変異が報告されており、これまで流行していた遺伝子型「GⅡ.4」とは異なる「GⅡ.17」の流行に注意喚起がなされている。

 「遺伝子の分類上はGⅡ.17も昔からあったものですが、今まで流行したことがなく、しかもGⅡ.17の中でも少し変異したものが流行しそうだと予測されています。経験したことがないという意味では“新型”といえるでしょう」と、首都大学東京客員教授の矢野一好さんは話す。

 新型ノロウイルスといっても、症状や対処法が大きく変わることはない。ただし、新型には免疫を持つ人がほとんどいないため、過去にノロウイルス感染症を経験した人でも、新たに感染してしまうリスクがあり、大流行も懸念される。日本だけでなく海外でも同様のウイルスが検知されており、世界的に流行する可能性もあるという。