ノロウイルスに感染したらどうする?

 新型ノロウイルスも、症状は従来のものとほぼ同じで、感染してから発症するまでは1~2日、発症すると多くの場合は激しい嘔吐と下痢が続く。腹痛や発熱が見られる場合もある。これらの症状は通常1~3日で治まるが、回復しても1~2週間は便中にノロウイルスがいることが多いため、他の人にうつさないような配慮が必要だ。

 薬などによる直接的な治療法はなく、基本的には対症療法となるため、症状が出ている期間をどう乗り越えるかということになる。

 「嘔吐や下痢は体からウイルスを排除しようとして起こる防御反応です。これによって大量の水分が失われますので、症状をひどくしないために、脱水を予防することが大事です」と、済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科副部長・十河剛さんはいう。

 人間の体は、通常、食事・飲水などから取り入れる水分が減れば、汗・不感蒸泄(自分では感じないうちに体から蒸発する水分)・尿・便として出ていく水分の量を調節して、脱水にならないように体内の水分を保とうとする。しかし、感染症にかかって、下痢・嘔吐・発熱による汗などで、バランスのとれる範囲を超えて大量の水分が失われると、脱水に陥ってしまう。

脱水を防ぐポイントは、正しい水分補給

 こうした脱水を回避するのが、経口補水液(ORS)だ。ナトリウム・カリウムなどの電解質が体に近いバランスで含まれている。ORSを用いた経口補水療法(ORT)は、点滴と同様の効果があることが確認されている。

 「急性胃腸炎のときには、小腸の粘膜が傷害されますので、水などを飲んでもうまく吸収できず、下痢になってしまいます。ORSは、傷ついた小腸粘膜でも生き残った部分にはたらいて、ナトリウムと水分をできるだけ効率的に吸収できるように考えられた組成なのです」(十河さん)

 水や利尿作用のあるお茶などを大量にとると、体内の塩分濃度が薄まってしまう。すると、体は薄まった塩分濃度を一定にしようとして、尿を増やして水分を排出しようとするが、尿にも塩分は含まれているため、さらに塩分が薄まって、低ナトリウム血症による脱水を引き起こしてしまうこともある。

 「電解質の含まれたORSを1回に5cc(ティースプーン約1杯分)を目安として、1~5分おきに飲むのがよいでしょう。飲みにくい場合は、電子レンジで少し温める方法もありますし、ゼリータイプを摂取してもよいでしょう。」(十河さん)

 また、食事は嘔吐が止まって脱水が改善したら、できるだけ早く始めたほうがよいという。

ノロウイルスの感染を拡大させない配慮が大切

 ノロウイルスは、手や食品などを介して経口感染する。小腸で増殖し、症状が起こる。

 「従来、感染経路はカキなどの二枚貝を生食あるいは十分に加熱しないで食べた場合が中心でしたが、近年では感染経路は多岐にわたり、食品を取り扱う調理従事者を介した食中毒事例が増加傾向にあります」(矢野さん)

 「不顕性感染」といって、ウイルスに感染しても症状が出ない場合や、軽い下痢などで済む場合もある。ノロウイルスに感染していると自覚しないまま、他の人にうつしてしまう場合もあるので、流行時期はちょっとした下痢などにも細心の注意を払おう。

便・吐物の消毒のしかた

汚れた床やトイレを処理する際は、ビニール手袋とマスク、できれば靴カバーなど浸透性がないものを着用して行う。

ウイルスが飛び散らないように注意しながら、薄めた塩素系漂白剤で半径2メートル程度は消毒する。換気装置がある場合は、必ず換気をする。窓が開く場合は窓も開ける。

掃除と消毒が終わったら、使用したものは他に付着しないよう、ビニール袋に入れて捨てる。

処理した後の残りカスにも大量のウイルスが含まれているため、乾燥して飛び散らないように注意。