3月22日に日本医療政策機構により「働く女性の健康増進に関する調査2018」のメディア説明会が行われ、全国の働く女性2000人に対して行った健康調査の結果が発表されるとともに、今後の課題についても提言がなされました。今回はメディア説明会の中から、「ヘルスリテラシー」と「仕事のパフォーマンス」、「月経とPMS(月経前症候群)」、「妊娠・出産」がどのように関連しているかを抜粋して紹介します。

仕事のパフォーマンスのために健康面でできること

 仕事にプライベートにと忙しい毎日を送っていると、怠りがちになるのが健康管理。もしかしたら、3食きちんと食事を取れない、先月の生理がいつ来たのか覚えていない、妊娠・出産も望んでいるけれど、今のままでは無理──という人もいるかもしれません。

 ところが、日本医療政策機構の調査によると、実際には「ヘルスリテラシー(※)」の高い人ほど、仕事のパフォーマンスが高く、PMSなどの月経トラブルにも負けずに働くことができ、望んだ時期に妊娠・出産ができる傾向にあるといいます。

(※「ヘルスリテラシー」とは、女性が健康を促進し維持するため、必要な情報にアクセスし、理解し、活用していくための能力のこと)

健康的な生活を送っていますか (C)PIXTA
健康的な生活を送っていますか (C)PIXTA

 まずは「働く女性の健康増進に関する調査2018」を見てみましょう。

【調査概要】
「女性の健康増進に関する調査2018」
◎調査期間:2018年2月2日~2月8日
◎調査方法:インターネット調査
◎対象者:調査会社パネルのモニターである全国18歳~49歳のフルタイムの正規社員・職員およびフルタイムの契約社員・職員、派遣社員・職員女性2000人
◎回答者内訳:年齢別 18~29歳・30.1%、30~39歳・32.1%、40~49歳・37.9%

 まず、何らかの疾患や症状を抱えながら欠勤せずに出勤するも、業務時間中に仕事のパフォーマンスが落ちている状態があるかどうかで自己評価してもらいました(※絶対的プレゼンティーズム)。それを数値化してヘルスリテラシーが高い群・低い群に分類すると、数値に差が表れました。ヘルスリテラシーが高い群ほど、仕事のパフォーマンスが高いという結果となったのです。また、PMS、月経痛など月経にまつわる症状があるときで比較しても、高ヘルスリテラシー群と低ヘルスリテラシー群に違いが出ました。

仕事のパフォーマンス比較

【平常時】
高ヘルスリテラシー群……64.672 ⇒仕事のパフォーマンスが高い
低ヘルスリテラシー群……56.922

【PMS時または月経随伴症状時】
高ヘルスリテラシー群……6.003 ⇒仕事のパフォーマンスが高い
低ヘルスリテラシー群……5.779

※絶対的プレゼンティーズムは「WHO-HPQ日本語版」を使用、数値が高いほど、プレゼンティーズムの傾向が低い(パフォーマンスが高い)

 この結果について、東京大学大学院医学系研究科産婦人科学講座教授の大須賀穣さんは次のように考察します。

 「月経痛やPMS、更年期症状は女性の仕事のパフォーマンスに支障をきたす代表的な症状ですが、ヘルスリテラシーの高い人ほど、これらの症状への対処がうまくできていると考えられます。例えば月経痛であればホルモン剤など医療機関で適切な投薬を受けている、PMSであれば診察をきちんと受けているのではないでしょうか。PMSは個人によって気分のアップダウンや頭痛、眠気など、現れる症状が異なります。そのため自分がPMSだと分かっている人は対処ができますが、PMSだと自覚していない人は、ただ生産性が落ちるがままになっているのかもしれません」(大須賀さん)