生産性を向上させるには、働く女性の健康を企業や行政がバックアップ

 以上の現状を踏まえ、日本医療政策機構は「今後は、定期健康診断に婦人科がん検診を含めることにより、受診率を上げることが求められます」(日本医療政策機構・宮田俊男さん)としている。

 「また、月経随伴症状を抑える効果のある低用量ピルや鎮痛剤、漢方薬など、薬の利用という選択肢も広がると良い。薬に関する正しい知識が普及し、必要なものには公的な補助が付けられると良いですね」(宮田さん)。

 現代日本で働く女性は、キャリアの形成期と妊娠適齢期が重なる場合が多い。しかし出産を希望する、しないにかかわらず、いきいきと働き続けるためには女性としての健康管理が必要だ。女性特有のがんなど、早期発見と治療が大切な病気については、定期的な健診が有効になってくる。今が健康でも、末永く働き続けるためには体が大事な資本。婦人科検診に行ったことがないという人は、まず一度受診してみてほしい。

 ちなみに、婦人科系疾患のなかでも、初期には自覚症状がないことが多く、早期発見のため2年に1度は検診を受けるのが良いとされるのが子宮頸がん。検診が受けられるのは会社の健康診断だけではない。自治体によっては、無料でがん検診を受けられるところもある。一度、自治体に確認しておこう。

この人たちに聞きました
日本医療政策機構エグゼクティブディレクター
宮田俊男さん
2003年大阪大学医学部医学科卒業。臨床経験後、厚生労働省に入省。現場と政策の谷を埋めるため、2013年9月、医療政策のシンクタンクである日本医療政策機構に参画し、政策提言を企画・立案している。同年11月から、内閣官房健康・医療戦略室の戦略推進補佐官にも任命。現在も現役の外科医。
日本医療政策機構のホームページ:http://www.hgpi.org/

日本医療政策機構マネージャー
小山田万里子さん
2007年明治大学経営学部経営学科卒業。在学時は非営利組織経営論を専攻。2012年11月より日本医療政策機構に参画。女性の健康に関する調査研究等の政策プロジェクトをヘルスケア関連企業、国際機関・団体と連携して多数の企画を実行。

東京大学大学院薬学系研究科医薬政策学 特任准教授
五十嵐中さん
2008年東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了。博士(薬学)。2010年より、一般社団法人・医療経済評価総合研究所 代表(兼任)。専門は医療統計学・医療経済学・薬剤経済学。

文/越智理奈、イメージ写真/PIXTA