婦人科系疾患は早期発見が大切なのに、若年層の検診受診率が低い

 ここまで見てきたとおり、社会全体で女性特有の疾患について考慮することなしに、女性がいきいきと働き続けることは難しい。環境整備が急務ではあるが、私たち個人個人が取り組めることは何だろうか。

 それは、検診。特に、子宮頸がんなど早期発見が重要な病気に関しては、定期的な受診をすることが女性の健康維持のカギとなる。

 その一方で、定期的に婦人科を受診している人の割合は調査対象の2割に留まり、働く女性の3割が、これまでに婦人科検診(子宮頸がん検診、子宮体がん検診、乳がん検診など)に行ったことがなかった。また、たとえば子宮頸がんは近年、20代~30代の罹患者が増えているが、早期発見につなげるべき20代の約半数が婦人科検診にこれまで一度も行ったことがないと回答したという(下図)。

国内の年齢別・婦人科検診の受診状況
国内の年齢別・婦人科検診の受診状況

 「今まで婦人科検診に行ったことがない人の半数近くが、その理由として、『健康なので行く必要がない』と答えています。検診の重要性の認知度が低いことが分かりました」(日本医療政策機構・小山田万里子さん)。

 世界の婦人科がん検診(ここでは乳がん、子宮頸がん)の受診状況を見てみると、明らかに日本の受診率が低い。

世界の婦人科がん検診の受診状況
世界の婦人科がん検診の受診状況

 「アメリカのように女性の社会進出が進んでいる国は8割を超えているのに対し、日本は4割。韓国も国として受診率向上に取り組んでおり、6割を超えています。かかりつけ医がいるイギリスやオランダでは、受診すべき人に個別に受診を促します。これは非常に有効なサポートだと言われています」(小山田さん)。

 日本でも「がん対策推進基本計画」に従って受診率50%を目標に取り組みが行われている。ただ、がん検診は市区町村だけでなく、職域なども実施主体となっている。そのため国が実態を把握できていないことも問題とされており、今後の情報の共有や連携の必要性が指摘されている。