仕事でもプライベートでも、発信力を高めることができれば、やりたいことができる環境が整う時代。せっかくの実力が発信力の弱さで埋もれぬよう、さまざまな実例をあげ、女性らしくしなやかに自己主張ができるようになる手法を、プレゼンノウハウに詳しい池田千恵さんが指南していく連載です。

「逃げ恥」ヒットの鍵は、私たちの中にある過去のトラウマの癒し

 新垣結衣さんが主役をつとめたTBS系ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(通称「逃げ恥」)がついに最終回の日を迎えました。私もドキドキ、ムズキュンしながら毎週火曜日を楽しみに待っていたひとりです。もともとは星野源さん目当てに観はじめたのですが、登場人物の人間らしさにはまり、それを機に海野つなみさんの原作マンガも一気読みしました。この原稿を書いている時点で最終回の結末はまだわからずヤキモキしているのですが、きっとどんな形であれ、素敵な余韻が残る結末になるのではないかと思っています。

 星野源さん演じる「平匡さん」をはじめとする「逃げ恥」キャラクターに私たちが感情移入し夢中になった理由は、「思い込みで暴走する人間のおかしさと愛おしさ」が描かれているからだと考えています。誰にでもきっとある、コミュニケーションにおけるすれ違いを個性的なキャラクターにちりばめ、どの登場人物にも「あるある!」「いるいる!」といったように共感することができました。キャラクターと自分を重ね合わせ、過去のちくちくした記憶と共に振り返ることができるところが共感ポイントでした。

Life is a tragedy when seen in close-up, but a comedy in long-shot.(人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇である)――
(出所:WikiQuote

 喜劇王チャップリンの名言です。「逃げ恥」もまさに、遠くから眺める私たちにとっては喜劇であり、登場人物にとってはとてつもなく深刻なものだったために、私たちの過去の切ない思いを、登場人物を重ね合わせることで笑いとムズキュンに変えることができたのです。