仕事でもプライベートでも、発信力を高めることができれば、やりたいことができる環境が整う時代。せっかくの実力が発信力の弱さで埋もれぬよう、さまざまな実例をあげ、女性らしくしなやかに自己主張ができるようになる手法を、プレゼンノウハウに詳しい池田千恵さんが指南していく連載です。

相手に自分の時間を握らせていませんか?

終わりが見えない「指示待ち残業」。これがいちばん辛いという人も多いのでは  (C) PIXTA
終わりが見えない「指示待ち残業」。これがいちばん辛いという人も多いのでは  (C) PIXTA

 先日、書籍とノートの棚の整理をしていたところ、10年以上前に使っていたノートが出てきました。懐かしいな、と思って開くと、「嫌なことリスト」が箇条書きで書いてありました。

 当時、自分の価値観を知るためには、好きなことを探すより、嫌なことを探すほうがよいという話を知り合いに聞き書いたものでした。好きなことを探そうとすると、周囲の目や常識などで曇った「本当は好きではないのに好きと思い込んでいること」を探してしまうけれど、嫌なことは明確に嫌だから、嫌なことを意識することで、かえって「好き」が明確化されるということでした。そこには一番最初に「予測できない時間に追われたくない」「自分の時間が読めないのが嫌だ」という文字が。今も昔も価値観は変わらないものだな、と感じました。時間とは命そのものです。「生きる」ということは実は「死ぬ」ことに向かっているのです。予測できない時間というのは、自分の命を人に差し出しているのと同じだと思うのです。

 会社員時代も今も、私が一番嫌いなのが「指示待ち残業」です。「指示待ち残業」とは、自分の仕事がもう終わっていて、あとは上司やお客様の次の指示を待っているだけの状態のことをいいます。待っている間他の仕事をすればよい話ですが、指示待ち案件が増えてくると、「これでOK!」となるか「もうちょっとここをこうして」となるかによって仕事量も大きく変わり、自分一人では残業の見積もりも立てられないため、気になって他の仕事にも悪い影響が出てしまいます。

 確認さえできれば帰ることができるかもしれないのに、肝心の上司やお客様からなかなかメールの返事がなかったり、中断できない会議が長引いたりと、自分がコントロールできないことに時間を使われるのがとにかく昔から嫌だったのです。

 もちろん、やむを得ない指示待ち残業もありますので全部をなくすことは難しいですが、たいていのものは工夫で減らすことができます。私はとにかく、指示待ちが生まれないよう、さまざまな工夫を重ねるようになりました。

 今回は、相手に自分の時間を握らせないために、メールでのやり取りにテーマを絞り、どのようなコミュニケーションを心掛けているかについて解説していきます。