ポイント1:寝かせていったんクールダウンさせる

 書いた資料、考えたアイディアはいったん寝かせてみて、第三者目線をあえて意識してみましょう。夜中に興奮して「私って天才かも!」なんて思いながら記録したアイディアや文章。朝見直してみたら全然天才でもなんでもない、普通のアイディアだった、ということはよくあります。可能なら半日程度、難しいようなら他の仕事や作業をしたあとにもう一度見直すと、より客観化して見ることができるようになります。

ポイント2:情報を研ぎ澄ませる「型」を覚える

 次に心がけるのは「型」を意識することです。実は、シンプルで分かりやすく印象に残る主張には「型」があります。古くから物語で使われている「起承転結」も、ハリウッド映画などでよく見られる「危機一髪逆転劇の後に男女が結ばれる」パターンも、水戸黄門の「この紋所が目に入らぬか!」という決め台詞も、この連載の第3回「新聞は読むだけでなく発信するために活用しよう」で紹介した「PREP法」も、すべて「型」です。「型にはめると自由な発想が妨げられるのでは?」と思われるかもしれませんが、型にまずあてはめてみることで、それ以外の余計な情報を削ぎ落とすことができ、分かりやすくなる場合が多いのです。

 今回は情報をまとめるのに有効な「型」をひとつ紹介します。GARPFS(ガルフス)メソッドというものです。

 GARPFSとは、次の頭文字です。

Goal:目的、共通認識を共有(同じゴールに向かいましょう)

Analyze:目的達成のための分析(こんなデータがあります)

Result:分析から得られた結果(興味深い分析結果が出ました)

Propose:分析結果を踏まえた提案(ついては、ぜひこの提案を)

Future:提案が実現した時の未来(これを実行すれば、こんないいことがあります)

Schedule:導入までのスケジュール、具体的ステップ(具体的には、こんな手順で実行して行きましょう)

 まず、目的(Goal)を明確にして、相手に心の準備をしてもらいます。あなたが一番何を伝えたくて、相手にどうして欲しいかを最初に言うことによって、相手は聞く態勢が整います。

 その後、分析(Analyze)、分析結果(Result)で、このアイディアを実行する価値があり、実行することによってこれを聞いた人に何らかの恩恵やインパクトがあることを示します。

 次に提案(Propose)です。分析結果を経てでた結論と、それを踏まえたあなたの提案を訴えます(最初に示すGoalとProposeは同じ内容で、あらためて主張を伝えます)。

 その後、このアイディアで広がる、すばらしい未来(Future)について伝えます。ここでデメリットとその解決策もあれば明確にするとより説得力が増します。

 最後に導入までの道のり(Schedule)を知らせ、ただの夢物語で終わらせるつもりではなく、自分はここまで考えている、というところをアピールします。

 この順番を意識して主張を組み立てると、過不足なく情報が入るようになります。また、相手が疑問に思う点を先回りして伝えることができるので、相手の頭にスッと入りやすくなるのです。

ポイント3:「で、何がいいたいんだっけ?」と自己ツッコミをいれる

 最後のポイント、自己ツッコミとは、自分の中にもうひとり批判的な自分がいるかのように斜に構えて見ることです。例えば私の場合は文章を書く仕事が多いのですが、文章を書きながらも毎回「自己ツッコミ」をいれています。

 具体的には、文章を書いていて論理に飛躍があった時、そこで執筆を止めるのではなく、赤字で「前の文章と後の文章で言っていることが違う」とか「何が偉そう」「この話の流れ意味不明」「あとでデータの裏付け必要」といった「心のつぶやき」「ツッコミ言葉」を、赤字で入れながら書くようにしています。

 この作業を習慣にすると、あとで見直した時、このツッコミを気にしながら、もう一度文章や主張を練り直すことができ、分かりにくい表現が少なくなりますよ。

 ぜひ上記3点のポイントを意識し、独りよがりの発信をしないように気をつけてみてくださいね。

文/池田千恵

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