仕事でもプライベートでも、発信力を高めることができれば、やりたいことができる環境が整う時代。せっかくの実力が発信力の弱さで埋もれぬよう、プレゼンノウハウに詳しい池田千恵さんが指南していく連載です。

データがないからと諦めたプレゼンの行く末は

説得力のあるプレゼンをするために、データは必須!…ですが (C) PIXTA
説得力のあるプレゼンをするために、データは必須!…ですが (C) PIXTA

 先日、とある企業の事業部長に対し提案プレゼンをする会に立ち会いました。発表者は管理職候補の女性十数人。彼女たちには、私が事前にプレゼンの設計方法、アイデアを伝えるためのデータの集め方などを個別指導し、1カ月後、自らが企画したアイデアを一人10分で事業部長に向け提案する、というトレーニングでした。

 発表者の皆さんの意見は皆、よくまとまっておりそつがないものでした。しかし、そつがない分、残念なことに面白みに欠けたものもいくつかありました。「事前に個別の打ち合わせをしたときに出たアイデアはワクワクするようなものだったのに、どうしてこうなってしまったのだろう?」と不思議に思い、後で事情を聞いてみると、「自分のアイデアを説得力あるものにするために必要なデータを見つけることができなかったから、最初のアイデアを諦めて、データを集められる内容でプレゼンした」という声が何人かから聞こえてきました。

 社外の公式プレゼンの場合は、「まだまとまっていませんが」と言って、中途半端なプレゼンをすることはもちろんNGです。しかし、今回は社内プレゼンでアイデアを発表することを目的とした会でした。私は、データが仮にまだ集められなくても、ワクワクするほうでプレゼンしてほしいと思っていました。そういうときは「このデータはまだ見つかっていませんが、私はこのアイデアがいいと思います!」と言い切ってしまうくらいの勢いが欲しかったのです。「残念だな」という気持ちが拭いきれませんでした。

 とはいえ、そこまで詳細に彼女たちへの期待を伝えていなかったのは私です。説得するにはデータが重要という話を私が強調したということもあり、自分の至らなさを反省した出来事でした。