留学に同行することで人脈を築くことができた

 グスタボは、ナタリーの留学への同行は人生においても、非常に貴重な時間だったという

 「多様な人脈を築いて、新しいビジネスのアイディアを考えることができて、本当に良かったよ。自分がこれまで築いたキャリアを生かして、何か新しいことをしたいという気持ちもあったし、アメリカのベンチャー企業や投資家との交流は、ここに来なければ出来なかった」

 グスタボは、ハーバードやボストン界隈の人脈を生かし、今年の4月に「Bratus Natural Capital」という会社を設立した。この会社の目的は、環境保全に取り組みながら経済的利益を生み出す事業を支援することだ。会社の設立により、ブラジルの森林保全プロジェクトの1つが間もなく始まるという。

 ナタリーの留学を機に、人生の新たな第一歩を踏み出したグスタボだが、はじめは苦労もあった

 「ナタリーは大学の友達にいつも囲まれていて、学校の行事に忙しかった。自分の友人関係を構築するまで、少し複雑な気持ちもあった。でも、ハーバードでは僕のような夫への支援が充実しているため、早い段階で自分の居場所を見つけることができたよ」

 ハーバードに通う学生のパートナーは、ほとんどの授業を履修することができるのだ。私も実はグスタボと出会ったのは、「社会的企業」に関する授業だった。グスタボは他の学生と同様、授業で発言をして一緒に課題をこなしていたので、彼を良く知るまでは、修士課程の学生かと思っていたくらいだ。

 「“修士号”はもらえないけれど、学生と同様のリソースの中で過ごせたので、本当に恵まれた環境だった。授業を聴講することで、他の学生、教授、実務家との人脈を築くことができた。これが無かったら、今の会社を設立することはできなかったと思うよ」

そもそも「ついていく」のではないから

 グスタボと話すと、彼がナタリーの留学を自然と自分にとっても良い機会と捉えるマインドセットを持っている事に一番感動した。しかも、留学中にも積極的に自分の夢に向かって行動して、結果を残しているのだ。これまで、私は海外駐在や留学の同行者はサポート役だと無意識に捉えていたが、むしろ積極的な選択にもなり得ると知った。

 「男性なのに、周りからどう思われるだろうかという意識はなかったかな。だって、そもそも“連いていく”という考えではない。ナタリーと一緒に決めた決断だよ、“一緒に留学”をするとね

 日本では終身雇用がまだ主流のため、そもそも会社をやめて海外で新しいチャレンジに臨むということ自体、珍しいと感じる。そんな環境の中、社会や周囲の人はグスタボのような決断を受け入れるだろうか。また、そういうパートナーを持つ女性は、どう映るのだろうか。グスタボとナタリーのように、男女問わず自由に選択できる生き方を、とても羨ましく思った。

文/大倉瑤子

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