前回の記事「ハーバードでも話題 意見分かれる男女平等のカタチ」 では、ハーバード・ケネディ・スクールで学んだ、各国のジェンダーロールの変化についてリポートした。

 今、アメリカは大統領選の話題で持ちきりだ。その中で、ヒラリー・クリントン氏は必ず「初の女性大統領誕生になるか?」と、「女性である」ことが注目されることが多い。世界を代表する女性リーダーといえば、ドイツのアンゲラ・メルケル首相を想像する人が多いだろう。メルケル首相はタイム誌の2015年「今年の人」にも選ばれた。ハーバード・ケネディ・スクールの教授も、彼女はヨーロッパの唯一のリーダーだと話す。

 そこでドイツ出身の男性の同級生、トビアス(23)に女性が国家のトップであることの影響を聞いてみると、意外な答えが返ってきた。

有能なリーダーがたまたま女性だっただけ

 「実は僕はメルケル首相を、あえて女性として認識したことはないよ。ドイツの外に出てから、首相が女性であることについて聞かれることが多くて逆に驚いている。僕は、有能なリーダーがたまたま女性だったというぐらいにしか、認識していなかったんだよね

ハーバードでのアメフト観戦にて。左がドイツ出身のトビアス(23)
ハーバードでのアメフト観戦にて。左がドイツ出身のトビアス(23)

 ハーバード大学のメアリー・ブリントン教授の研究(参考:前回の記事「ハーバードでも話題 意見分かれる男女平等のカタチ」) によると、ドイツではこの20年で、「男女は共に働くべきだ」という価値観が大半を占めるようになった

 トビアスの両親は共働き。父親より母親の方が高収入だが、本人や周りがそのことを気にする様子は感じたことがないと話す。またトビアスの世代ではさらに、「女性は働くべき」という社会観が強まっているという。

家庭を選ぶことに対する価値観が男女ともに否定的になっている

 「今は特に女性に対して『キャリアを詰め!』と、働くことを推奨する社会の風潮を感じるんだよね。社会全体に何となく、家庭よりキャリアを選ぶべきだという雰囲気がある。そしてそのキャリアを強調するあまり、家庭を選ぶことに対する価値観が男女共に否定的になってきた。僕は、それは良くないと思うんだ」と彼は言う。