私にとって専業主婦の母親は、「キャリアを犠牲にしてでも、家族の面倒をみてくれる人」「子育てに全力投球してくれる人」「多忙な父親と子どものパイプ役になり、家族をまとめる軸になる人」だ。

 これは、仕事を辞めて育ててくれた自分の母への思いが、影響しているかもしれない。母が付きっきりで子育てをしてくれたからこそ、今の自分がいると感謝している。片方の親が働かなくていいのは、良い意味での「贅沢」だと思っていた。

 自分の描く母親像、女性像、キャリア、子育への展望・・・それぞれが育った社会や国の中での「ジェンダー・ロール」が、その価値観に大きく反映されていることに今更ながら気づいた。また、私は自分の「ワークライフバランス」を考えるとき、自分と家族の問題だと思っていたが、ハーバードの同級生にとっては「社会への還元」という、自分にはないベクトルがある事を知った。

男女平等が徹底されているフィンランド

 男女間格差を示すジェンダーギャップ指数(世界経済フォーラム)が145か国中3位のフィンランド。ヘリーと話すと、先進国の中でも最低水準の101位の日本とは、日常生活の行動への考え方も異なると知った。フィンランドでは女性が両手に大荷物を持っていても、男性は手を差し伸べないという。助けることは、女性=助けが必要で弱いという価値観を表すため、失礼にあたるのだ。それくらい、男女平等は徹底されている。

 ヘリーは婚約者をフィンランドに残し、ハーバードに留学をしている。将来子どもが生まれたときには、夫と交互に育児休暇を取りたいという。

フィンランドに残っているヘリーの婚約者(左)。夫婦二人で育休を取りたいというヘリー
フィンランドに残っているヘリーの婚約者(左)。夫婦二人で育休を取りたいというヘリー

 「せっかく2人いるんだから、お互いの長所を生かし、短所を補いながら子育てをしたい。確かに女性にしかできない子育ての側面はある。でも、生涯のパートナーとして選んだ相手なんだから、自分にはない魅力的な部分があるでしょ? それを自分の子どもになるべく体感してほしいのは、当然のこと」