「自己評価が低く、消極的な部下をどう育てればいい?」「努力すればできると思うのに、やる前から失敗を恐れている部下にはどう接すればいい?」など、部下の育成に関して悩んでいる人も多いはず。そこで今回は、ビジネスコーチの谷益美さんに部下育成について教えてもらうとともに、ゲストに脳科学者の枝川義邦さんを迎えて「自己効力感」について解説をしてもらいます。記事の最後に「自己効力感チェックリスト」も載っているので、ぜひやってみてくださいね。

「自己効力感」を高めて部下の成長をサポート

普段はあまり聞き慣れない、「自己効力感」とは一体何なのでしょうか イラスト/北村みなみ
普段はあまり聞き慣れない、「自己効力感」とは一体何なのでしょうか イラスト/北村みなみ

 上司にとって、部下の成長は喜びの一つ。「たくさんの経験を積み、成果を出すことで自信をつけてほしい」と願うからこそ、部下には積極性やチャレンジ精神を求める人も多いと思います。

 しかし、そんな思いとは裏腹に、「私には無理です」が口癖で、挑戦することを避けたり、行動する前から諦めたりしている部下はいませんか? そんな部下を育てるときには、「自己効力感」(セルフ・エフィカシー)にアプローチすることが有効です。

 今回は、理論的な部分を脳科学者の枝川義邦さん(通称エディ先生)に解説してもらいながら、「折れない心」の源でもある「自己効力感」に焦点を当ててお話ししたいと思います。それではエディ先生、よろしくお願いします!

「自己効力感」(セルフ・エフィカシー)とは?

◆エディ先生のワンポイント解説◆

 まずは「自己効力感」とは何なのかを説明していきたいと思います。

 「自己効力感」とは、ある状況下において、「自分は必要な行動を取って、目の前の壁を超えられる」「うまく対処して結果を出せる」という自信や期待のことです。

 他者が自分のことをどう思うのかではなく、自分が自分のことをどう思うのかという「主観的認知」なので、周りが「あの人には無理だ」と感じていても、本人が「できる」と思っていれば、その人の自己効力感は高いといえます。反対に、いくら周りからの評価が高くても、本人が「できない」と思っていたら、その人の自己効力感は低いことになります。

 ただ、自己効力感は変化するものです。心と体が充実している時には高まりやすいので、環境や年齢、極端な場合を言えば、日によっても変化するものです。例えば、第一志望の企業に就職した直後は高くても、慣れない仕事で失敗をすれば、入社時よりも低い状態になるかも知れません。また、仕事や人生のキャリアを積むと、「多少の困難なら乗り越えられる」と思えるように、年齢や経験を重ねることで高まることもあります。