多忙を極める役員や上司が本業に集中できるよう、きめ細やかなサポートを行う総務の専門家・秘書。そのスキルには、どんな職種の人にも応用できるお仕事のヒントが満載です。前回・秘書検定面接官に聞く 電話&メールのビジネスマナー に続き、今回は、伝え方が難しい「お詫び」「催促」「お断り」のコツについて、自身も秘書経験があり、現在はマナー講師や秘書検定面接官も務めるプロフェッショナル・杉本直鴻さんに教えていただきました。

 「ご提案」や「お礼」など相手に喜んでもらえそうな事柄とは違い、「お詫び」「催促」「お断り」といった心苦しい用件を伝えるのが苦手だという人は多いのではないでしょうか。

 しかし、そうした用件こそしっかりと伝えなければ、さらなる心苦しい状況や相手との関係性の悪化を招いてしまう可能性も。円滑に伝える方法を見ていきましょう。

お詫びの気持ちをきちんと伝える方法は? (C)PIXTA
お詫びの気持ちをきちんと伝える方法は? (C)PIXTA

【お詫び】先方の怒りの理由をくみ取ることが第一歩

 まずは「お詫び」から、伝え方のポイントを教えていただきましょう。

 「大切なのは、こちらの言い分を聞いていただくことではなく、相手の言い分をすべて聞き届けること。謝罪するのはそれからです」と杉本さんは強調します。気持ちが焦って、ついお詫びの気持ちを先走って伝えようとしてしまうかもしれません。しかし、まずはきちんと話を聞くということが大切なのですね。

 「もし先方が怒っていらっしゃるのであれば、その怒りの理由をきちんと理解しなければ、ただお詫びをしても誠意は伝わりません。その場しのぎで逃げようとせず、誠意を持って、しっかりと歩み寄る必要があります」(杉本さん)

 電話やメールのお詫びでは不十分だと感じるときは、訪問して気持ちを示すことも重要。状況によっては、上司に同行してもらうなどしてお詫びの意を伝えましょう。忠告をいただいた場合は、そのことについてお礼の気持ちを伝えることも忘れずに。

 また、前回の記事・秘書検定面接官に聞く電話&メールのビジネスマナーでは、電話の声は高いトーンのほうが好印象だとお伝えしました。しかし、「お詫び」「催促」「お断り」の場合は例外になります。

 「とにかく相手に合わせることを意識してください。先方が低い声で怒っているなら、こちらの声も同じように低くします。声のトーンも含め、とにかく歩み寄ることが不可欠なんです」(杉本さん)

 そして、相手の言い分を十分にくみ取ったうえで、お詫びの言葉を伝えます。「約束していた電話連絡がなかった」という理由でお怒りの場合であれば、「お電話でご連絡を差し上げると申しておりましたのに、申し訳ございません」というように、相手の心情を理解したことが明確に伝わるようお詫びをするのです。

 そのことによって、ただ「申し訳ございません」と謝罪するよりもずっと、「自分の気持ちを理解してくれた」という思いになっていただけるのだと杉本さんは言います。