ビジネスシーンでの手土産や贈り物。プライベートと違い、選び方のコツや贈り方の作法はなかなか会得しにくいもの。調達係になったときに、「どうしよう」と悩む人は多いのでは。
 そこで、ビジネスシーンに最適な接待・会食のための店や手土産選びのサポートをしてくれる「こちら秘書室」の担当室長・渡邉華織さんに相手に喜ばれる手土産を指南していただく。また、渡邉さんの話とともに、「こちら秘書室」の登録メンバーである全国の秘書164人に聞いた「失敗しない手土産」アンケートの結果を紹介しよう。

手土産の第一印象を左右するのは手提げ袋

 ぐるなびの企画開発本部で、「こちら秘書室」の担当室長を務める渡邉華織さん。20年にわたり大企業の社長や会長秘書を務めてきた渡邉さんは、これまで数え切れないほど手土産選びを手掛けてきた。日本企業では会食後のお客への手土産は、ホスト側だけでなくゲスト側も用意するのが暗黙のルールであるなど、業務として「相手が喜び、かつ上司の顔を立てる手土産」を手配する必要に迫られてきたからだ。

ぐるなび運営サイト「こちら秘書室」担当室長を務める渡邉華織さん。大手金融会社や流通会社の社長秘書、外資系コンサルタント会社の会長秘書を歴任し、現在は、「こちら秘書室」登録の秘書3万5000人の「まとめ役」だ
ぐるなび運営サイト「こちら秘書室」担当室長を務める渡邉華織さん。大手金融会社や流通会社の社長秘書、外資系コンサルタント会社の会長秘書を歴任し、現在は、「こちら秘書室」登録の秘書3万5000人の「まとめ役」だ

 その渡邉さんが、まず分かりやすい手土産の重要ポイントとして挙げたのが、土産を入れる手提げ袋の外観だ。

 「手土産は最初の印象がとても大切です。ですから、しっかりとした紙質でお店の名前が印刷された、ラグジュアリー感がある、見た瞬間にすてきと思えるような袋に入れてくれるお店を選んでください。無地の袋や、ただ店名を記したシールが貼ってある袋、薄手の紙、持ち手が細い紙製の袋に入れるお店は避けること。お土産そのものは、しっかりした包装紙に包まれていることが大事ですね」と渡邉さんは指摘する。

秘書クチコミ!
【ラグジュアリーな包装の手土産】

HIGASHIYA(東京・銀座など)の和菓子
桐箱に入っているものもあり、シンプルながらも高級感があるのでビジネスシーンにもよい。(関東地方・30代・秘書歴10年)

※ぐるなび「こちら秘書室」登録の全国秘書に聞いた「失敗しない手土産」アンケートの結果より(調査期間:2017年12月11日~12月18日、有効回答164人) 以下同

 手土産を渡す相手が男性、それも特に年配者の場合は、ピンクやパステル調といったかわいらしい袋は持ち帰りづらい。そのため、誰が持っても気恥ずかしくないユニセックスな外観の袋に入った土産であることが大切になる。「赤に金字といった袋もラグジュアリー感があっていいのですが、失敗がないのは黒や紺地の袋でしょう」(渡邉さん)。かつては「ブランド力」があった百貨店の紙袋も、今ではあまり印象がよくないというから注意が必要だ。

 また、地方に出張に行った際、空港で土産を買う人も多いかもしれない。しかし、そうした場合は、路面店を出しているような店の商品を選び、必ず手渡し用にその店の紙袋を付けてもらうことが大切だ。何も指定しないと、空港の売店の手渡し用袋を用意されてしまうので注意したい。売店の袋では、いくら中身がよくても、通りすがりに買い物を済ませたという印象になるからだ。「相手のために手間暇をかけていることをアピールできるかが重要」と渡邉さんは言う。

手土産の重さにも注意

 手土産の重さにも気を配りたい。重過ぎるものを避けて適度な重さのものを選びたいが、「持ち帰りやすいだろう」と単純に軽いものを選ぶのは基本的にNG。袋が風にたなびくほど軽いものだと、いいものをもらったと感じにくいからだ。

 「秘書の仕事の中では、上司のこだわりもあるので、大きくて重いものがいいとおっしゃる方もいれば、大きなものはスマートではないとおっしゃる方もいる。そうしたこだわりも鑑みながら選んでいきます」(渡邉さん)。大きさにこだわる上司に付いていたある秘書は、常にメジャーを携帯し、候補となる土産の寸法を測っていたという話もあるそうだ。

 適切な手土産の重さは、贈る相手のその後の移動手段が社用車やタクシーか、公共交通機関かでも変わってくる。車であればある程度の重さがあるものでもかまわないが、公共交通機関の場合は、かさばるもの、重いものは先方の迷惑になるからだ。そのため、秘書は相手がどういった交通手段で会食などの場まで来るのかを事前にリサーチ。また、その後のスケジュールも聞き、それによって重さを決めるという。

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【持ち運びしやすい手土産】

花一会(東京・麻布十番など)の椀もなか
椀もなかは、甘味ではなくもなかの皮の中にスープやお茶漬けの具などが入ったもの。軽くて持ち運びも便利。海外に持って行く際も、赴任中の方、外国の方、両方に喜ばれる。(関東地方・40代・秘書歴12年)

 なお、軽い手土産が常にNGなのではなく、好ましい場面もある。先方が出張で訪問してくれたときや次の訪問先があるときなどは、持ち帰りの負担が少ないギフト券を贈るといい。また、自分の都合に合わせて商品を取り寄せられるという理由で、年末年始など贈り物が重なる時期もギフト券は喜ばれる。

 「最近は、デザインも考えられたカード状できれいなケースに入ったデザイン性の高いアイスクリームのギフト券や、立派な桐箱に入ったウナギのギフト券などがあり、差し上げる際にも安っぽい感じがしません」(渡邉さん)。