渡す相手が複数いるときは

 さて、手土産を渡す相手が複数いて、肩書がさまざまであったり男女が混ざっていたりする場合は、何を選ぶのかが非常に悩ましい。人によって内容を変えたほうがいいかもしれないとも思うが、必ず全員同じものにするのが手土産の原則。土産を渡す際、意図したものとは違う品を先方に渡してしまうリスクが大きいからだ。

 ただし、これには例外もある。「例えば、中国の方はステータスによって差を付けることが大事なので、職位が1番上の方と2番目の方は別のものを差し上げなくてはいけません。それも一見して分かるよう、大きさ、重さ、両方に差をつけます」(渡邉さん)

 渡す際の気配りポイントはまだまだある。飲食店での会食の後に手土産を渡す場合。事前に相手に分からないように店に土産を預け、店を出る際に渡せるようにしてもらう。

 もう一つ気を付けたいのは、渡す当日の天候。当日が雨天であったときのことを考え、雨よけを用意しておきたい。手土産を渡す日は、購入した日でないことが多い。土産を購入する際に雨が降っていないと販売店側は雨よけをつけてくれないが、渡邉さんは必ずこちらからリクエストして雨よけを用意してもらっていたという。

 「雨が降った際、先方の秘書の方が雨よけを用意しているのに、こちらがむき出しの紙袋でお出しすると、秘書の力量が出てしまう」と渡邉さん。「何があるか分からないので、念には念を入れる」というわけだ。

相手の情報を集めてから商品選びを

 こうした基本的なことを踏まえながら、相手に喜ばれる手土産を選ぶ際に一番重要なのは、「相手の方の情報を集めること」だと渡邉さんは力を込める。「相手が喜び、かつ上司の顔を立てる手土産」を選ぶためだ。

 「相手の方の家族構成、健康状態や趣味は必ず調べます。その方の趣味に合わないものを贈ると、高価なものでも食べていただけなかったり、箱の中に入ったままになってしまったりします。お孫さんがいらしたり、お嬢様が同居されていらしたりすれば、お土産を家に持ち帰ったときにご家族に喜んでもらえるものを考えます」と渡邉さんは説明する。

 仕事上での手土産なのにプライベートの家族のことを考えるのは、理由がある。「ご家族は、『お父さんばかりいつも会食でおいしいものを食べて羨ましい』という思いがあるんですよ。ですから、ご家族が喜ぶものを選ぶと、『おじいちゃんすごい』『お父さんすごい』とご家族の中でのその方の株も上がり、結果として贈り主の上司にも喜んでもらえます」(渡邉さん)

秘書クチコミ!
【贈り相手の家族を考えた手土産】

HACCI(主要都市の大手百貨店など)のドリンク
ハチミツに美容成分を加えたドリンク。毎日帰宅時間が遅いお客様の奥様のためにと選び、喜ばれた。(関東地方・40代・秘書歴8年)

 どんな土産だと家族に喜んでもらえるかは、相手の事情ごとで異なるが、「例えば、大学生のお嬢様がいらしたら、会食が終わって帰宅する夜9時、10時でも起きていらっしゃる場合が多いだろうと考えられます。その際は、そのぐらいの時間でもすぐ食べられる話題性の高いお菓子など、ご家族の会話が盛り上がり、ご家族団らんのきっかけになるものを考えます」とのこと。

 また、海外に赴任した経験のある相手の場合は、赴任先の国の食べ物を贈るのも一つの方法。家族も含め、「懐かしい」と喜んでもらえるからだ。

 里帰りの際に選ぶ手土産にも同じことが言える。喜ばれるものを選ぶには情報集めが基本で、「お父様、お母様が好きなもの、今何に興味を持っているかなど、ちょっとした会話からヒントが得られるはず」と渡邉さんは言う。

 「私は相手の方の好みが分からないときは、自分から質問しています。例えば、青い服をよく着ている方ならば、『青がお好きなんですか』とか『他にどんな色がお好きですか』というふうにです。そうすれば、お花を贈る際などに、好きな色の花を贈って差し上げられます。食べ物も、『どんな食べ物がお好きですか』などとストレートに聞いてしまいます。いかにも手土産のリサーチをしているように思われるかもしれませんが、案外ばれないものですよ」(渡邉さん)