秘書を仕事とする女性たちの美しい立ち居振る舞いや気配り、会社のトップの身近で働くというやりがいのある仕事内容から、「秘書になりたい」と憧れる女性は少なくない。そこで、秘書歴1年未満の新米秘書から20年を超えるベテランまで、「こちら秘書室」に登録している秘書4人にお集まりいただき、秘書職のあれこれについて語っていただいた。前編は、「秘書ってこんなオシゴト」として、秘書職ならではの仕事内容や苦労話、醍醐味などを聞いた。

座談会参加者の秘書の皆さん(左から、すべて仮名)

伊田春海さん
52歳。秘書歴25年。ホテルに勤務後、秘書に転職。建設会社の社長秘書を経て通信、IT系企業の社長秘書を経験後、現在は大手通信系企業の社長秘書を務める。

竹内実樹さん
49歳。秘書歴20年。日系航空会社勤務後、翻訳の仕事を経て、金融会社、小売・流通会社、外資系コンサルタントで社長や会長秘書を務めた経験がある。

島倉美穂子さん
33歳。秘書歴約10カ月。病院勤めを経て一昨年転職。現在マーケティング会社役員秘書を務める。

添畑沙希子さん
35歳。秘書歴10年弱。介護関係の仕事から、一般事務職を経てメーカーの秘書に転職。現在は、通信サービス系企業で役員秘書を務める。

他の職種から秘書職に転向

――皆さん、どのような経緯から秘書になられたのですか?

添畑 私は秘書になろうとは思ったことはなくて、一般事務の仕事をしているうちに、気が付いたら秘書の仕事をするようになったという感じです。

 もともと人の世話をするのが好きで、最初は介護関係の仕事をしていました。人の世話をするという意味では、秘書の仕事と似ているのかもしれません。そこから営業事務として転職した先で、本来は秘書が担当するような業務も任されて……。それが、仕事の方向を変えるきっかけとなりました。今はIT関係の会社で秘書をしています。

伊田 私はホテリエ時代に、成功者と呼ばれる方々にたくさんお会いしました。そのどなたも雲の上の存在であり、輝くような方々ばかりでした。そのような方々の立ち居振る舞いはしなやかで、横柄な態度を取るでもなく、独特な空気感をまとい圧倒されたものでした。そんな一流と呼ばれる方々の元でお仕事をしてみたいと思ったのが秘書になるきっかけでした。

島倉 私は病院のレセプションの仕事をしていたのですが、その病院にいらした秘書の方に憧れて。ドアの開け方や歩き方、座り方が美しいといった立ち居振る舞い、頂き物があったときに手紙を添えてお返しをされるような気が利くところ、そういったところを女性として見習いたいと思ったんです。また、レセプションの仕事をしながら先生方のスケジュール管理もするようになったので、そうした業務を一般企業でやってみたらどうだろうと興味が湧いてきて、転職をしました。

竹内 私が大学を出て最初に勤めたのは航空会社で、客室業務部で部長のサポートをし、マナーの訓練やVIPと同じフライトに乗ってアテンドをするといった仕事をしていました。それから一時、翻訳の仕事をしていたのですが、出社してから退社するまで人と話もせずひたすら机に向かうという仕事で、世の中から断絶されてしまって。また世界とつながれる場所で働きたいと思ったとき、秘書って恰好よさそうだなと。ミーハーなんです(笑)。それで、金融会社の社長秘書に転職しました。