ねぎらいの言葉にほろりとくる瞬間

――これまで上司から感謝をされたことはありますか?

島倉 私は最近、上司から「最近、風邪引かなくなったよ」って言われて。経験が浅いので、試行錯誤しながら上司のスケジュール管理に気を配ってきたんですが、これでよかったんだと思うようになりました。

竹内 いいときは何も言われませんが、悪いときはすぐ言われます(笑)。会食のアレンジをしたら、「昨日の店はよくなかった」とか。

伊田 成功する接待、会食の第一歩は、目的に相応しい会場選びなので、いつも利用している使い勝手がいいお店に偏りがちです。たまに、「次の会場は、話題性があり、今まで行ったことのない場所を」と上司からリクエストがあると、必死に探します。単にお店探しをするのではなく、料理の味はもちろん、店内が会話しやすい雰囲気か、車寄せはあるかなど、持ち合わせている情報をフル活用し、マッチするお店を選びます。時には、事前にお店を訪ねて店内の雰囲気も確認します。

 例えば、先方が100年の歴史ある企業の場合は、何十年、何百年と続く老舗店を会場としてアレンジします。それを社長が気付いてくれたときは、「やった!」と思いますね。

 新規ビジネス獲得のための会食から長年お付き合いのあるお客様への接待、あるいはささやかなランチミーティングまで、どんな場合でも、おろそかにせず、入念な企画と下準備をすることで、おもてなしの心がお客様にも届くのだと思います。

添畑 私は会食をアレンジすることはほとんどないのですが、これまでの秘書の仕事の中でできたお店のリストやネットを活用しています。ネットでは、料理長やシェフがそれまで修行したお店などの情報も詳しく調べます。秘書の仕事で褒められることは普段ないものなのですが、会食の場として社長が初めて行くお店をアレンジして、「本当によかった」と言われたときはうれしかった。秘書をやっていてよかったと思いました。

竹内 私はある企業の社長秘書だったとき、「一生の宝にしよう」と思った出来事がありました。秘書として付いていた社長がグループ会社の社長就任で転籍する際、社内ポータルサイトに最後のメッセージを掲載したのですが、「私が気兼ねなく世界を回れたのは、秘書の竹内さんのおかげです」というような私への感謝の言葉を冒頭に書かれていたんです。口数が少なくシャイな方で、普段は感謝の言葉をかけてもらえなかったけれど、それを全社員へのメッセージの中で言ってもらえたのは本当にうれしかったです。

――秘書冥利に尽きるお話ですね。

竹内 新しい上司は、どういったサポートを秘書に求めているか分かりません。そんなときに私が心掛けていたのは、3つの方向から相手をサポートするということでした。

 1つは下からのサポート。当たり前のことですが、指示された業務をこなすということです。

 2つめは横からのサポート。健康管理といった横から寄り添うサポートです。

 3つめは上からのサポート。上司の不得意な分野のサポートです。

 どんな方にも不得意な分野はあります。人の顔を覚えるのが苦手、名前を覚えるのが苦手、字があまりきれいではない、ファッションに関心がない――。私は上司のそうした苦手分野を探して、サポートをすることを常に心掛けていました。

 例えば代筆をして差し上げる、海外のレセプションや会議のドレスコードに気を配るといったことです。ご年配の方は、タキシードを着なければいけない場面なのに礼服でいいだろうと思われたりするんです。

 秘書は、上司が最高のパフォーマンスができるよう、上司の時間を少しでも「生み出す」ようサポートしなければいけないので、上司が身に付けなくてもいい教養を自分が身に付け、業務としてサポートするのが大切だと思っています。

 次回・誰もが身に付けておきたい「秘書スキル」って? に続く

文/大塚千春 写真/稲垣純也 取材協力/こちら秘書室、天現寺大使館


「こちら秘書室」 http://secretary.gnavi.co.jp/

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