スケジュール管理、出張サポートのハプニング

――多忙な上司のスケジュールを細かな気配りをしながら組み立てるのは、とても大変な作業なのですね。これまでに経験されたトラブルはありますか?

伊田 秘書になりたての頃ですが、スケジュールのダブルブッキングがありました。来客の予定があった時刻に会議を入れてしまったことがあります。

 そのときはたまたま前日に、先方の秘書の方が「明日はお世話になります」とご挨拶を入れてくださいました。そのおかげで、どうにか会議のリスケジュールをすることができ、事なきを得ました。大事なのは、アフターフォローです。社内会議であっても関係者へのお詫びはすぐに入れることです。そして、スケジュールはバッファーを取ること。スケジュールミスを最小限にとどめられます。

竹内 秘書が知らないところで上司が約束してしまっていることもありますよね。先方がミーティングで来社されたときに「じゃ、次はいつね」と約束して、秘書に知らされていないというケース。そうしたときは心の中で「私のせいじゃないし」って思うんですが(笑)。

島倉 私は上司の海外出張のスケジューリングでハプニングを経験しました。上司から「こちらで進めてください」というようなことを言われたので、現地の支社が組んだスケジュールを見て、私の判断でアポを進めてもらってしまったんです。ところが、いざ上司がそのスケジュールを見たら、「これはちょっとタイトだ」と指摘を受けて、1件アポを断るはめになってしまいました。大きな失敗ですが、いい経験になりました。

――出張のサポートは大変そうですね。

添畑 以前、海外出張のサポートをした際は大変でした。飛行機一つとっても、日系がいいのか外資がいいのか。ビジネスかエコノミーか。マイレージの状況はどうなのか。初めてのことが多く、いろいろなことを調べて、把握してからアレンジしなくてはならなかったんです。

伊田 通信、IT関連の国際会議や展示会が毎年開催されるのですが、その海外出張の手配にはコツが必要です 。

 ホテルを予約する際には、会場から近いところを手配するのは必須なのですが、利便性や安全面を最優先に考えて手配します。ところが、そうしたホテルは規模が大き過ぎて、同じ会議やイベントの関係で宿泊している人が多く、不都合があるのだそうです。例えば、プログラムによっては、参加者の皆さんが移動する時間が重なるので、エレベーターが混雑して、自分の宿泊階に行けなかったり、忘れ物一つ取りに行くにも時間がかかるといったことが起きるのですが、これは上司から指摘されて初めて気が付きました。

 他にも、タクシーや会場までの送迎バスもそれなりの数がイベントに合わせて用意されていても、利用する人も多いので、思い通りには使えません。そのため、レンタカーを事前に手配するのは必須ですね。海外では特に、安全、かつ無駄な移動時間をなくすことが必要となります。

――海外出張は勝手が違いますね。ところで、ここだけの話、合わない上司っているものですか? そんな上司の担当になったときどうされますか?

伊田 秘書は、上司に合わせた補佐をするのが当たり前、ただ、人間であれば、「どうしても合わない」と感じる人がいるものです。今でこそ思えるのですが、最初に「合わないな」と感じるタイプの上司のほうが、実は仕事においてはプラスになることが多いような気がします。合わないということは、性格や考え方も違えば、仕事の進め方も違います。お互いの違いを理解して仕事を進められるようになれば、欠点も補い合えます。気の合わない相手の行動も、情報としてインプットしていくことで、相手への怒りや不満でイライラすることもなくなり、お互いの能力を最大限生かせる仕事上のよきパートナーになれるかもしれません。

竹内 私は1度、「この方のサポートは絶対嫌だ」と思ったことがあります。どうにか1年頑張ってみましたが、ある時「あなた、秘書は向いてないよね」と言われて、その場で「異動させてください」とお願いしました。相手の立場に立ってサポートをするという仕事ではあっても、上司を尊敬できないと限界があります。