雑念が襲った、その理由とは
静まり返った私の心に、寝息が聞こえてきたのだ。同行の編集者が寝たのである!
一瞬慌てたが、すぐに「雑念は流す」という教えを思い出す。自分の呼吸に意識を戻し、無事に1まで数え終えた。
「ではここで、もう一度サンカルパを言いましょう。心の中で3回唱えてください」
私は1回目より強く宣言した。
(別荘建てるぞ! 別荘建てるぞ! 別荘建てるぞ!)
先生が再び、祈りのマントラを歌い始めた。一度目とは違う旋律で、心地よさが倍増して聞こえる。
「自分の体の中の音に、意識を集中させましょう」
スタジオの中、さらに外の音も受け止める。そうして私は、瞑想の世界から戻ってきたのだ。
眠ってしまっても効果はある!?
「ずっと起きていましたね。初めてなのに珍しいですよ」
目を開いたとき、近年まれなほど頭がすっきりしていた。とても寒くて、思わず毛布を引き寄せる。
「起きていた人は皆さん、言われていることははっきり分かるのに、体は動かないとおっしゃいます。完全にリラックスして、潜在意識が開いていたのでしょうね」
どうにか瞑想に入れたようだ。潜在意識に、「別荘を建てる」という誓いのタネがまかれたと願おう。眠ってしまった編集者も、最後には起きて、こう言った。
「眠ったり戻ったりしていて、どれくらいの時間がたったか分かりません。毎晩いろいろ考えて眠れない日々が続いていたんですが、ここでは眠れてびっくり。頭に詰まったアレコレが、減った気がします」
「眠ってしまっても、ヨガニードラ瞑想は潜在意識の中に入り込んでいくので効果はあります。瞑想を繰り返すうちに、眠らなくなってきますよ」
この夜、編集者はぐっすり眠れたそうだ。