和菓子への注目度が、じわりじわりと上昇中です。洋菓子と比べてなんとなく縁遠いイメージだった和菓子に、熱い視線を送る女性たちが増加しているとか。今年4月に新宿高島屋で行われた和菓子イベント「WAGASHI 和菓子老舗 若き匠たちの挑戦」(通称:ワカタク)は、連日大盛況。中には、和菓子店のオリジナルTシャツに身を包む熱心なファンもいたというから驚きだ。彼女たちを虜にする和菓子の魅力とは、一体どのようなものなのだろう。全国の和菓子を食べ尽くし、知り尽くす、高島屋MD本部の和菓子バイヤー・畑主税さんにお話を聞いた。

畑 主税(はた・ちから)さん
1980年2月14日のバレンタイン生まれ。早稲田大学商学部卒。社会人になるまで、誕生日にケーキを食べる以外は、一切甘いものを食べずに過ごした。2003年に高島屋入社、洋菓子の売り場担当を経て4年目に和菓子担当となって以降、全国の和菓子店を駆け巡り、1000軒以上の和菓子店を訪ね、口にした和菓子は1万種類以上にも上る。和菓子を食べない日はないという、話題のバイヤー。

ブログ:http://blog.livedoor.jp/wagashibuyer/
twitter:https://twitter.com/wagashibuyer/

――和菓子への注目度の高まりを、どのように感じていらっしゃいますか?

 世間的にはまだまだ、ブームと言えるほどの動きにはなっていないと思うんです。でも、ワカタクのイベントにたくさんの方が興味を示してくださったり、イベントをきっかけに和菓子ファンの女性が増えるのを実感したりすると「新たなムーブメントが生まれつつある」と感じますね。

 新しい商業施設に和菓子店の出店が増えているという現象を見ても、和菓子の躍進を実感します。各地でさまざまな和菓子イベントが企画されるようになり、日常の中に少しずつ和菓子が浸透してきたことの表れではないかと思います。

――畑さんが結成された「ワカタク」について詳しく教えてください。

 和菓子の新たなスタンダードを構築すべく、老舗・名店の若主人たちを集めて昨年結成したチームです。和菓子の世界は長い年月に渡る歴史があり、その中で伝統が重んじられており、職人よりも暖簾に重きが置かれている。パティシエに光があたる洋菓子の世界とは少し違うんですよね。実はここ最近、老舗和菓子店の世代交代が多く、買い付けや商談で全国の店に伺う中で、「若主人」となった方とお話をする機会がぐっと増えました。そうした出会いの中で、新しい挑戦をしようという気概ある“若き匠”を集結させたのが「ワカタク」です。

 「ワカタク」のイベントでは、実演と物販とイートインを三位一体で、全員一緒の共有スペースで行ってもらいます。これは、和菓子店にとってはかなり難度が高いこと。いずれも、日ごろ自分たちの店ではやっていないことですし、老舗同士が互いの手の内を見せあうということはないからです。そのうえイベントでは、紅茶やハチミツといった変化球の食材を使った和菓子を求められるわけですから、和菓子職人としての技術力のみならず、かなりの柔軟性や発想力、そして協調性が必要です。

 実力や情熱を兼ね備えた匠たちが集まり、本気で腕を振るうからこそ、これまで和菓子に無関心だった人たちをも巻き込んだ新しいうねりが生まれつつあるのだと思います。

 「ワカタク」の活動では「和菓子のパティシエ」を生み出そうとしているのか、とよく聞かれますが、個人のタレント性や技術を売り込もうとしているわけでは決してありません。あくまでも職人たちが直接、和菓子にまつわる奥行きのある物語や思いを伝えることにより、和菓子の魅力を広めて、次世代にバトンを渡していこうという取り組みなのです。