コート要らずのポカポカ陽気にも慣れはじめ、桜の開花予想を見聞きする時節になりました。桜のつぼみは日に日に膨らみ、いよいよお花見シーズン到来です。高島屋のカリスマ和菓子バイヤー畑主税さんも「お花の和菓子の中でも桜は別格」というほど、特別な季節。春だからこそ味わいたい、特別な桜のお菓子を厳選していただきました。

 「和菓子のモチーフとして最も魅力的なのは、桜ではないでしょうか」と話すのは、これまでに1万種類以上もの和菓子を吟味してきた高島屋の和菓子バイヤー畑さん。

 花をモチーフとした和菓子は数多く、その中でも別格なのが桜。桜が咲く春は、たくさんの麗しい和菓子に出会える季節でもあるのです。それでは早速、古今東西の桜の和菓子をご紹介いただきます!

※ここで紹介した和菓子は、高島屋の一部店舗で入手できます。

東西で異なる桜もちのルーツ 関東風・関西風の代表商品はコレ!

 まずは、桜の和菓子の代表格である桜もち。東西でスタイルが異なることは知られていますが、その理由はルーツの違いにあります。

 小麦粉を薄くのばして焼いた餅生地で餡を巻き、桜の葉で包む関東風の桜もち。これは、桜の名所に集う花見客に向けて江戸時代につくられたのがはじまりだと言われています。

 それに対して関西風の桜もちは、道明寺(蒸したもち米を乾燥させて挽いた道明寺粉を、浸水させて蒸したもの)の中に餡を入れ、桜の葉で包むというもの。これは、『源氏物語』にも登場する日本最古の餅菓子「椿もち」をアレンジしたものだと伝えらえています。

 つまり、時代も地域も違い由来の異なる2種類の和菓子に、たまたま「桜もち」という同じ名前がつけられたというわけです。

 ここでは、東西の桜もちの老舗による銘品を教えていただきましょう。

左は関東風の桜もち、長命寺山本の「長命寺桜もち」。右は関西風の桜もち、鶴屋寿の「嵐山 さ久ら餅」
左は関東風の桜もち、長命寺山本の「長命寺桜もち」。右は関西風の桜もち、鶴屋寿の「嵐山 さ久ら餅」

■長命寺山本(ちょうめいじやまもと)
「長命寺桜もち」 6個入り 1350円(税込)

 関東風桜もちの元祖と言われ、江戸時代から親しまれている一品です。小麦生地をクレープのように薄く焼いた餅は、着色されておらずまっ白。モチモチに仕上がったシンプルな生地を塩漬けにした桜の葉3枚で丁寧に包むことで、潤いが保たれるとともに葉の香りが淡くうつっています。きめ細やかな口当たりのこし餡は甘さ控えめで、2個3個…と続けて食べたくなります。

【和菓子店について】

 江戸時代の創業以来、製造するのは「長命寺桜もち」のみ。初代が考案した桜もちを長命寺の門前で売り始めたところ、花見客の間で評判に。以降、桜の季節だけでなく1年を通して、変わらぬ味を提供し続けています。作りたての「長命寺桜もち」は店内で味わうことも。

【DATA】
長命寺山本
URL:http://www.sakura-mochi.com/
住所:東京都墨田区向島5-1-14
TEL:03-3622-3266
※配送不可

■鶴屋寿(つるやことぶき)
「嵐山 さ久ら餅」 6個入り(サービス箱入)1102円(税込)

 折り曲げることなく端正な姿のままに重ねられた2枚の桜葉。その間に、こし餡を包み込んだ道明寺が挟まれています。みずみずしくてモッチリとした弾力のある餅と、淡く上品な甘さのなめらかなこし餡の相性は抜群。一口サイズの道明寺は着色されておらず、もち米本来のやわらかな乳白色。そこからほんのりと透けて見える餡の赤みが、桜の花びらを思わせます。

【和菓子店について】

 鶴屋吉信(※)より独立し、桜の名所である京都・嵐山において初の桜もち専門店として創業。名物の「嵐山さ久ら餅」をはじめ、「本わらび餅」「羊羹」といった滋味深い和菓子が人気です。吟味を重ねた素材で丹念につくられるお菓子は、おもてなしの品として喜ばれています。(※吉信の吉は土の下に口)

【DATA】
鶴屋寿
URL:http://www.sakuramochi.jp/
住所:京都府京都市右京区嵯峨天龍寺車道町30
TEL:075-862-0860
ネットショップ:http://www.sakuramochi.jp/shopping.html