女性が一人もいない「新陳代謝」のない会議

 では、なぜ外務省から市長を目指したのか。そして副市長に「女性の視点を持って行政に当たることができる人」と言い切る理由は何なのか?

 大阪府の東北部に位置する四條畷市は人口約5万5000人、都心まで電車で約20分の緑豊かなベッドタウンだ。しかし近年、子どもの数が急激に激減し、地域経済も低迷している。

 東氏は「日本を変えるために中央省庁で働きかけても、何年かかるか分からない。1ミリだって変わらないかもしれない。ならば生まれ育った町の再生から、日本を元気にしたい」と立候補を決意した。

 いわば沈みかけた船に飛び移るような20代の判断。「外務省を辞めて市長になるって言ったら、地元のみんなに反対されました」と東氏。しかし選挙では、そんな地元の人々が、一緒に戦って今も応援してくれている。

 当選後には、想像以上の財源、そして人材の不足に直面した。

 新しい市長として市政を行うに当たって特に問題視したことの一つは、「組織に多様性が欠けていること」だ。四條畷市役所には、部長級以上の女性の幹部職員が一人もいなかったのだ。育児や介護など、働きたい女性が抱える課題を解決するための会議に集まるのは、いつも全員が男性だった。

 「例えば防災に関してでも、女性トイレの設置などに関する議題があったとき、まともな論点で話し合いすらできない。長く行政で経験を積んだ男性だけの集団となることで、新陳代謝のない職場になってしまっていた」と東氏は言う。

 子育て世代を増やして安定した市政を目指しているのに、女性のニーズがきちんとくみ取れていないことに対する20代独身の市長の強い危機感も、今回の広い公募につながっているのだ。