持ち家のローン買いは、一か八かの大勝負

――世の中に出ている「持ち家vs.賃貸派の損得論議」をここでおさらいすると、例えば、5000万円が手元にあるAさんとBさんがいて、Aさんがそれで持ち家を買い、Bさんが有価証券を買った場合、この段階ではどちらが得でどちらが損ということはありません。

 仮に不動産と有価証券の最終的な投資利回りが同じ5%だとすれば、Aさんは持ち家から帰属家賃という形で年間250万円、Bさんは有価証券の配当という形でやはり年間250万円の利益をそれぞれ得る、と。

石川:Aさんが手にする帰属家賃は、自分で自分に払う仮想のものですから厳密に2人の投資行動が同じというのは違うと思いますが、まあ考え方としてはそれでいいと思います。

――でも、分不相応なローンを組んで買うとなると話が変わってくる。

石川:無理なローンを組んで家を買うというのは、高いレバレッジを掛けて、投資商品を購入するのと同じ行動なんです。

――先ほどの例で言えば、手元に1000万円しかないのに、借金して5000万円の投資をしているようなものだ、と。FXとかデリバティブ系の投資商品とか、5倍のレバレッジを掛けられる金融商品はあるでしょうけど、一般の会社員の家庭が、爪に火を点す思いで貯めた1000万円を元手にそんなことをするとは思えません。

石川:ところが、こと持ち家を買う局面では皆、あっさりとその大胆な選択ができてしまう。ハイリスクな選択ですから、当然、当初の想定が維持できなくなると様々な問題が顕在化します。それは、ローンが払い切れなくなることだけではありません。持ち家を買うということは、そこから逃げられなくなることを意味します。怖いのは購入した後の環境の変化です。

――やばい人が隣に引っ越してくるとか。

石川:それ以上に深刻なのは災害でしょう。福島第一原子力発電所の事故では、少なからぬ住民が自宅の放棄を余儀なくされました。しかし私の知る限り、損害保険では「核災害」による損害は免責です。その結果、多くの方が事実上住めなくなった家のローンを払い続けながら、新しい家のローンも払う二重ローンの状態に陥った可能性があります。

――なるほど。