宝くじで1億円当たった人がその後どんな人生を歩んでいるか、ご存じですか? 気になる末路を描いた「宝くじで1億円当たった人の末路」(日経BP社)が、2018年4月にドラマ化されました。タイトルは、「○○な人の末路」(日本テレビ)。突然大金を手にしてしまった人や、事故物件に住んでしまった人、仕事に疲れて田舎に移住した人など、本の中で紹介されている人の末路が一層リアルに描かれています。
 そこで今回はドラマ化を記念し、本の著者である鈴木信行さんと、ドラマに登場する女優の黒川智花さんの特別対談を行いました。「仕事に追われていてもちゃんと体を休ませたい」「ライフサイクルが違う友達に会えない」など、働く女性である黒川さんが抱える悩みに、あらゆる末路を知る鈴木さんはどんなアドバイスをするのでしょうか? 本の内容をピックアップしながら、全3回でお届けします。

第1回 「意外な人」の「意外な末路」が響く…「末路本」解説
第2回 自分の末路を想像できる? 「末路本」で見えるもの(この記事)
第3回 人々の「末路」が私たちの心のサプリになる理由
女優・黒川智花さん
女優・黒川智花さん
1989年8月1日生まれ、2002年デビュー。2005年にドラマ「雨と夢のあとに」(テレビ朝日系)で連続テレビドラマで初主演を務める。主な出演ドラマに「てるてるあした」(テレビ朝日系)、「DOCTORS~最強の名医~」(テレビ朝日系)、「THE LAST COP/ラストコップ」(日本テレビ系)、「あなたのことはそれほど」(TBS系)など
「宝くじで1億円当たった人の末路」著者・鈴木信行
「宝くじで1億円当たった人の末路」著者・鈴木信行
日経ビジネス副編集長。1967年生まれ。91年、慶応大学経済学部卒、日経BP入社。「日経ビジネス」、日本経済新聞産業部、「日経エンタテインメント!」などを経て、2011年1月から現職

電車で「中ほど」まで進まない人は出世しない?

――日本の通勤ラッシュは世界最悪レベルだといわれています。駅では混雑緩和のため、「電車の『中ほど』までお進みください」というアナウンスをよく聞きますが、ドア付近で立ち止まる人が意外に多い。「中ほど」まで進まない人には、どのような末路が待っているのでしょうか?

鈴木:持病や痴漢対策のため、致し方なくドア付近に立っている人もいるかもしれません。しかしそのような例外を除くと、「中ほど」まで進まない人には不足しているものが3つあると考えられます。人間心理に詳しい専門家に聞いたところ、一つは「気を利かせるための回路」、もう一つは「広いビジュアルフィールド」、最後は「他人に働きかけるコミュニケーション能力」でした。これらはすべて社会で活躍する際にも役立つもの。不足していると、将来の見通しは暗くなってしまうそうです。

黒川:最近はスマホに熱中していて、周囲の異変に気付かない人も大勢いますからね。ついつい面白いコンテンツに夢中になってしまい、視野が狭くなってしまうのかもしれません。今日もスマホを熱心に見ていた人の近くを目の不自由な方が歩いていて、ぶつかりそうになっていたんですよ。

鈴木:えっ、黒川さんも電車に乗るんですか!?

黒川:乗りますよ! しかも結構大きな声で「すみません」とか「降ります」とか言っています。今日もぶつかりそうな状況を見ていて、スマホをしている人に「すみません、人が通りますよ」って大声で呼びかけたんです。目の不自由な方が線路に落ちたら大変なことになると思って。

鈴木:でも殺伐とした世の中ですし、下手をすればトラブルにもなりかねません。それでも声をかけるなんて勇気がありますね。ちなみに電車では中ほどまで進みますか?

黒川:言うべき答えを聞いた後なのでちょっと答えにくいですが、私はすぐに奥まで行くタイプです。無言でぶつかるとお互いに嫌な気持ちになりますけど、「すみません」と一声かければ譲ってくださる方は大勢います。少しの気遣いで自分も他の乗客も快適に過ごせると思ったら、声をかけるのが苦ではなくなりました。

鈴木:もしかして、幼少期からそういう教育を受けていましたか?

黒川:実は母が、近所の人から「挨拶大使」と呼ばれるくらい誰にでも挨拶をする人だったんです。そんな母に挨拶は大事だと教わっていたので、今でも気軽に声をかけることができているのかもしれません。

鈴木:実は、冒頭で挙げた「気を利かせるための回路」、「広いビジュアルフィールド」、「他人に働きかけるコミュニケーション能力」は、いずれも幼少期から時間をかけて醸成されるものだそうですよ。挨拶を大切にするお母様のおかげで、黒川さんは電車で中ほどまで進む人に育ったのかもしれません。ところで、書籍ではそんな人におすすめの人生も紹介しているんですよ。それが次にお話しする「『疲れた。海辺の町でのんびり暮らしたい』と思った人の末路」です。