クレイジーな案を大量提出。その数なんと…

 「ふふふ。がんばって奇抜な案を30くらい出したんだ。その中で気に入ってくれたのが、“恋愛ゲーム”だったというわけ」

 30案……!

 「個人的には、最新の腕時計と犬を表で比較して、どちらがビジネスに役立つかを検証する記事がオススメだったんだけど、それはボツになっちゃった。でも、採用された案も、作るからにはもちろん全力で作ったよ」
 「恋愛ゲームと犬以外の、残り28案はどうなったんですか?」
 「もちろん全てボツ。世の中そんなものだし、もっとたくさんボツになることもある」

 それから、上司は自分がこのゲームを作る上でいかに細部に力を入れたか教えてくれた。
 まず、既存の恋愛ゲームを3つ、エンディングまでプレー。そこで使われているセリフや、1行あたりの文字数、場面転換の数などを詳細にメモする。
 そして、腕時計の写真を自分で撮影し、必要な小道具があれば自分で作る。
 パソコンとスマホではプレーするときの見え方が違うので、それぞれに合わせた画面を作り分ける。なんと、スマホでは主役のセリフが数文字ずつ短いのだという。さらに、スマホだと回線が遅い可能性もあるので、画像のファイルサイズを個別に圧縮し、限界まで小さくする……。
 とても「腕時計が転校してくる」ような、ふざけたゲームのためにかける労力とは思えない。

 ここまでやらないとダメなのか!

*続きはこちら→ 第九回 自分のアイデアを通すには 相手が納得する提案の仕方

文・イラスト/吉永龍樹


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