全く興味がないのに、締め切りがやってくる日々

「初めは不安だった」と振り返る柚月さん
「初めは不安だった」と振り返る柚月さん

吉永:今はそのコラムサイトも広がって、日本茶インストラクターの資格を持っている社員が緑茶の記事を書いていたり、旅に出るのが好きな人が日本の絶景を巡る記事を書いていたりします。その人は、土日にハイキングに行った時なんかにネタを仕入れるわけです。一昨年「世界遺産級の“絶景ブルー”が神奈川に!」って記事を書いたらものすごい話題になって、フェイスブックで9000近いシェアをされたんですよ。
 人間生きていれば、好きなことって自然にできるわけじゃないですか。コンテンツの仕事をやっているのなら、それを出した方が幸せなんじゃないかと。それが、今、色々な人でうまく回っている感じです。

――そうは言っても最初に好きなことを書けばと言われた時、柚月さんには戸惑いもあったのでは?

柚月:初めは、うまく書けるのかなぁと思いました。会社にはサービス企画部門のアシスタントとして入ったんです。それがいつの間にかコラムを書く仕事になって、5年ぐらい続いていました。500字ほどの健康系の記事で、どんな飲み物を飲むと健康にいいとか、どんな習慣が肩こりを誘発するとか。週に2本ぐらい書くんですがアーカイブがない。健康には全く興味がなくて、興味がないのに締め切りが来るんです。

吉永:書いたものは配信はされるけれど、サイトの中身を埋めるための、消費されるだけの「捨て記事」ですよね。アーカイブがないから、5年経っても何も残っていない。それはよろしくないのではないかと思いました。

柚月:そうなんです。サイトがなくなるとともに、自分の記事もなくなってしまう。

吉永:どうせ人生の5年間を使うのなら、自分の名刺代わりになったり、後につながったりする仕事の方がいい。使い捨てのことをずっとやっていても仕方がない。そこを変えたいなと思いました。どうしたら変えられるのかを考えて、そうしたら本当に好きなことを書いてちゃんとログを残してというのがいいんじゃないかと思ったわけです。
 だから、少し加工はしているけど連載は実話で、「契約社員なのに、朝4時まで徹夜した仕事…その結果は」のエピソードのように、好きなアーティストの記事を書き始めたらものすごく読者が付いた。次第に、同じようなファンの人から認知されるようになって、映画やイベントなどの仕事が舞い込んでくるようになったんです。

柚月:健康系の記事を書いていた頃にはまったく想像していなかった仕事がいただけるようになって。映画監督やプロデューサーさんへのインタビュー仕事も増えていきました。

吉永:制作側の人たちとか、日常では出会えないような人が目の前にいるわけだから、インタビューのときには柚月さん、すごい緊張していましたよね。

柚月:へんな汗とかかいてました(笑)。