ガチで好きなものには、誰もかなわない

連載は、このお二人によるほぼ実話の小説でした
連載は、このお二人によるほぼ実話の小説でした

吉永:当時、柚月さんはもう30代で、アイドルのファンであることを恥ずかしいと思っていたのかもしれません。だから占いを付け加えた。連載の「好きを仕事に…人に言えない趣味も仕事にできるのか?」、このエピソードのあたりですね。

柚月:アイドルのファンでいると、そういうところがあると思うんです。恥ずかしいというか、人からどう見られるかが気になる。占いと言ったのは、ちょっと格好をつけてたんです。これをやったら当たるんじゃないかって、経験からくる変な打算もありました。占いのコンテンツだったら、そこそこ読んでもらえるものができるんじゃないかと。

吉永:僕はたまたま知り合いに占い師が何人もいて、彼らと柚月さんは雰囲気が違うな、という思いがあった。彼女は占いの記事を書いたこともなかったので「占い」と聞いた時、それはやめましょうと即座に言いました。僕は相手の可能性を大事にしたいと思っていますが、ダメだと思うところはきっぱり切るのが上司としての仕事ですから。
 一方で、アイドルのファンというのは本物だと思ったんですね。だから、本当に好きな記事を書いて載せましょうということになりました。

柚月:中学生の頃からファンだったんです。「恥ずかしい趣味を仕事に生かしてみた 上司の反応は?」に書かれたオタクっぷりに近いですね。あるグループが解散した時もライブDVDのレビューを書くことになって、資料のために実家に帰りました。昔のアイドル誌とかVHS(ビデオテープ)とかが置いてあるんです。好きだったグループが解散することになって、今、ここで記事を書かなきゃファン失格だと思って。この記事はエキサイトというサイトに掲載されたものなのですが、読者の方の反応もよく、月間エキサイト賞をいただきました。

吉永:そんなに好きなものがあってうらやましいというぐらい、柚月さんは、ガチでファンなんです。本物だったら、勝てる。本当に好きなことを文章化すれば、にわかライターの人が書くよりも絶対に密度が高いコンテンツになると思いました。ただ、当時はうちの会社にその記事を掲載する枠がなかったので、今までの枠の中でそういう記事を置いても不自然じゃないコラムサイトを作って、そこに載せました。そうしたら、やっぱり数字が付いてきたんです。