「何のために働いているのかわからない」。そんなこじらせOLが主人公の小説『言い訳ばかりの私を変えた夢みたいな夢の話』を、本連載「才能がない人の夢のかなえ方」としてお送りしていきます。前回、上司のまさかの時短テクを聞いておどろいたヤグチでしたが……。
前回までのお話→ 前書き、第一回、第二回、第三回、第四回、第五回、第六回、第七回、第八回、第九回、第十回、第十一回、第十二回、第十三回、第十四回、第十五回、第十六回、第十七回、第十八回:時短のため、スーツ以外の服を全部捨ててみた その結果
【第十九回】不覚にも、涙
「人間は、1日のうちに、そんなにたくさんの“選択”や“決断”をできないらしいんです。だから、服を選んだり、昼食に入る店を選んだりすることをやめれば、その分、自分の作品づくりに力を使うことができるんじゃないかな……と」
聞いたこともない理論だが、上司は大真面目な顔で話している。
「ほかにも時間を節約するために、いろいろしてますよ。例えば、失礼とは思いながらも、メールでは挨拶などを極力省略して、要件しか書かなかったり。あと、プライベートではテレビを1秒も見ないようになっちゃいましたね……」
「すごい。徹底してますね」
「自己満足なのかもしれませんが、夢の達成は時間との闘いですからね」
「私も何かやってみます」
そういえば、毎週録画しているオダマモの番組、あれもトーク部分なら倍速再生でチェックすればいいのかもしれない。それなら1時間番組を30分で処理できる。
「チーフは、アイデアが出ないときは、どうやって工夫してきたんですか?」
「もがくしかないですよ。100回考えてダメなら、1000回考えるとか……。これまでとはまったく違うジャンルを試してみたりもしますね」
やっぱりもがくしかないか! ただ、もがくことなら私にもできる、と思った。