「何のために働いているのかわからない」。そんなこじらせOLが主人公の小説『言い訳ばかりの私を変えた夢みたいな夢の話』を、本連載「才能がない人の夢のかなえ方」としてお送りしていきます。前回、クレーマーに連絡を取って会いに行ってみたヤグチ。今日も忙しく残業をしていたところ、上司から驚愕の時短テクを聞かされることになります……。
前回までのお話→ 前書き、第一回、第二回、第三回、第四回、第五回、第六回、第七回、第八回、第九回、第十回、第十一回、第十二回、第十三回、第十四回、第十五回、第十六回、第十七回:クレーマーをSNSで発見 連絡を取って飲みに行ってみた
【第十八回】上司のスランプ
その日も私は原稿が終わらず、オフィスに残っていた。
すると、上司がふらりとやってきた。
「自宅から来たんですか? 徒歩1分の」
「いや、外で打ち合わせしてから戻ってきたんです。それに、家は電車でひと駅のところに引っ越しました……。近すぎると働きすぎちゃって」
珍しく沈んでいるような気がした。
どうしたのだろう?
「何かあったんですか?」
「特に何もないんですけど、アイデアが思いつかなくて、苦戦してます……」
「えっ。LINEスタンプのグッズも発売になって、ますます絶好調じゃないんですか?」
「それはそうなんですけどね……」
こんなふうに力なく話す上司は初めてだ。