時間との闘い

 上司の夢は、「自分が描いた変なキャラクターを、世界中の人に見てもらう」ことだ。そのために、ものすごい努力を重ねているように見える。
 かつては、自分の夢と会社の仕事を切り離して考えていた。だから、定時で帰って家で作品づくりをしていた。今は、仕事をすることも夢の実現に直結している。だから、会社で猛烈に働いている。私もそうだけれども。

 「チーフは、自分の夢のために、自分の時間を全部使っているんですか?」
 「そうなんですよ。才能が足りないから、そうするしかないかなー、と」
 「それでも時間が足りないときはどうするんですか? 私、ここのところ、すごく寝不足で、毎日もっと時間があればなって思います」
 「僕も昔からずっと、時間が足りないって思ってます。時間を捻出するために、とにかく努力しましたよ。例えば、スーツ以外の服を全部捨てたり」
 「えっ? なぜ?」
 「スーツしかなければ、何を着るかで悩む必要がなくなるじゃないですか。もちろん、家にいるときに着るパジャマは残してますけど」
 「アウトドアはどうするんですか? 海とか山とかに誘われたら?」

 「パジャマでは不便なので、スーツで山に行きました。なぜか知らない人にすごく写真を撮られましたね……」

 スーツ姿で登山する上司を想像して思わず笑ってしまった。

*続きはこちら→第十九回仕事中に泣いてしまった 原因は2通のこんなメール

文・イラスト/吉永龍樹


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