「何のために働いているのかわからない」。そんなこじらせOLが主人公の小説『言い訳ばかりの私を変えた夢みたいな夢の話』を、本連載「才能がない人の夢のかなえ方」としてお送りしていきます。前回、自分へのクレームを乗り越えて、会社の新規事業に関わることになったヤグチ。上司から「クレーマーに会ってみるといい」とアドバイスをもらっていましたが……。
前回までのお話→ 前書き、第一回、第二回、第三回、第四回、第五回、第六回、第七回、第八回、第九回、第十回、第十一回、第十二回、第十三回、第十四回、第十五回、 第十六回:助けて!自分へのクレームが原因で事業が1つ潰れそう
【第十七回】編集者ひとりの新規事業
私は新しくできたサイトの編集長になった。
といっても、編集者は私ひとりしかいない。
自分で原稿を書いたり、外部の人に原稿を依頼したりしながら、切り盛りしなければならない。
私の書いた記事がヒットして、多くの人が読みにきてくれれば、「ファン同士のチケット交換サービス」のほうへと集客できる。
これがうちの会社の新しいビジネスなのだ。
私の書くマニアックな記事が、いつのまにか、会社にとって重要なものになりつつある。
ほんの数カ月前なら想像もつかなかった状況だ。
私は、編集長になったというプレッシャーを感じる暇もなく、仕事に追われていた。
何しろひとり。自分がやらなければ、サイトの更新が止まってしまうのだ。
新規事業戦略部の人に、「ほかにも担当者をつけてほしい」とお願いしてみたら、「収益があがるようになったら」という返事だった。
つまり、今ががんばりどころ、というわけだ。
2.5次元ミュージカルについてなら誰にも負けない、と思えるくらい詳しくならないとダメだ。
人気シリーズの新作が出たら、劇場に足を運ぶ。公演のDVDもまとめて観る。
ファンが集まるネットの掲示板も回って、マニアックなネタを拾う。
記事の反響をチェックして、企画に活かす……。