正直なところ、この時期「黒豆」という言葉を口にしたくない。周囲にいない?「黒豆奉行」なオバちゃんが。自分の煮方以外は認めない。こういう人はもれなく「黒豆自慢」だから大晦日ぐらいに「上手に煮えたから食べてみて♪」と、お裾分けをくれる。かくして、ぽてち家の食卓にはジャムの空きビンに入った黒豆(名札つき)が3つ4つと並ぶことになるのだ。

 そんなこんなで、今月の試食「黒豆茶」は、ちょっとしたレジスタンス。「私の黒豆なんだから、私の好きにさせてくれ!」という心の叫びだ。あぁスッキリした。(連載「美と健康と心に効く飲み物5 黒豆茶」より)

 今まで自分で黒豆を煮たことはないものの、お奉行様たちに囲まれて育った私は、すっかり黒豆耳年増だ。「丹波篠山の……」「LL以上の大きさがないと」「なんといっても新豆でなくちゃ」「最近は北海道のがいいのよ」と、情報はがっちりキャッチしている。渋谷のデパ地下「東急フードショー」に入っている高級スーパー「成城●井」に行ってみたら、いつもはガラガラな乾物コーナーに人が集まっている。

 なにこれ? 黒豆だけで5種類もあるの? 値段も容量も少しずつ違うから比較しにくいなぁ。先に来ていた奥様っぽい人は左右に違うパッケージを持って、真剣に表示を読み込んでいる。その向こうにいる大奥様っぽい人は、同じパッケージの中から、さらに「いいもの」を選んでいる様子。

 参りました!黒豆に対する真剣味が足りなかった……のだが、あれ? 店頭に「丹波の黒豆」のノボリが出てるじゃないの。行ってみると、そっちは量り売りだった。

「丹波篠山の?」
「はい」
「新豆?」
「そうです」
「大きさは?」
「Lでございますね」

 う~~ん、煮豆じゃないからLでいいのか。こっちにしよう。

 「200gください(←あとで発覚するアホ)」

 この試食では毎回「失敗の女神」に微笑まれてしまうので、ティーバッグの黒豆茶もゲット。前にいただいた十勝産「お湯をそそぐだけ」の黒豆茶がすごくおいしかったので、北海道産のオーガニックのお茶を買ってみた。

(c)PIXTA
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