異質なものを排除しない「インクルージョン」

 ガガは、「ジャストダンス」「ポーカーフェイス」「テレフォン」「バッドロマンス」などのヒット曲をメドレーで披露。そして、2011年の発売当時にも物議を醸した「ボーン・ディス・ウェイ」で、次の部分を選んで熱唱します。

ゲイでも ストレートでも バイセクシュアルだろうと
No matter gay, straight, or bi
レズビアンだって トランスジェンダーであっても
Lesbian, transgendered life
私は正しい道を歩いてる
I was born to survive
私は生き抜くために生まれた
I’m on the right track baby
黒人も白人もベージュの人も
No matter black, white or beige
混血の人も東洋系も
Chola or Orient made
私は正しい道を歩いてる
I’m on the right track baby
勇敢に生きるために生まれたの
I was born to be brave

 このハーフタイムショーでは、かつてはビヨンセが人種差別を真っ向から訴えるパフォーマンスをしたこともありました。そのため、今回レディ・ガガの直接的な政治メッセージを期待していた人にとっては、肩透かしと感じた声もあったようです。

 それでも、アーティストらしく歌と演出で、異質なものを排除しようとするトランプ大統領政権に対する批判や主張をし、私たちへのメッセージを残しました。直接的な言葉ではないのにはっきりと伝わったことが、高く評価されたわけです。

「ダイバーシティ&インクルージョン」の実現へ (C) PIXTA
「ダイバーシティ&インクルージョン」の実現へ (C) PIXTA

 トランプ大統領就任式翌日のウーマンデモには多くのセレブが登場して世界中に広がっていったものの、結局は煮え切らない雰囲気を残したままに終わりました。それを考えれば、今回のガガのパフォーマンスの意義は大きかったはず。

 日本でもグローバル化やダイバーシティ(多様化)などが叫ばれながらも、やはり単一民族の島国色は今でも拭いきれません。それでも、これから5年間、300人規模でシリア難民を受け入れるといった動きも報道され、少しずつ私たちの周りにも変化が起こっています。

 対岸の火事としてパフォーマンスを眺めるのではなく、世界で今起きていること、そして自分の周りにも起こりうることとして、ガガのメッセージを受け取りたいもの。社会的な一体性を意味する「インクルージョン(寛容・包括性)」が、今必要なキーワードです。

文/上野陽子 イメージ/PIXTA