こんにちは。「女子による女子のための映画DVDガイド」の映画ライター・清水久美子です。

 非正規雇用。アルバイトやパート、派遣社員、契約社員、私のようなフリーライターもそうですが、正社員ではない雇用形態で働いている人はたくさんいますよね。近年、さまざまな問題が語られている非正規雇用をテーマに、韓国で深刻な事態となった実話を基にした映画「明日へ」が作られました。

 この映画を演出した女性監督のプ・ジヨンさんにインタビューし、「明日へ」に込めた思いや、製作の背景、男性が多い映画業界における女性監督としての立場や意義についてなどをたっぷり語っていただきました。

「明日へ」(原題:카트/英題:CART)
11月6日(金)より、TOHOシネマズ新宿ほか全国順次公開
(C) 2014 MYUNG FILMS All Rights Reserved.
配給:ハーク

公式サイト:http://www.ashitae-movie.com/

 インタビューの前に、映画の内容を紹介します。

 大手スーパーマーケット「ザ・マート」で働き始めて5年、レジ係のソニ(ヨム・ジョンア)は正社員への昇格が決まります。夫は出稼ぎをしており、2人の子どもを育てながら、苦しい家計を支えるために懸命に働いてきたソニ。急な残業を頼まれても嫌な顔一つ見せず、客からの悪質なクレームにも耐えてきた甲斐があったと喜ぶソニは、古い携帯電話を使い続けている高校生の息子テヨン(ド・ギョンス/アイドルグループ「EXO」のD.O.<ディオ>)に新機種を買う約束をします。

 ところが突然、ザ・マートの現場業務を外部に委託するという理由で、非正規雇用者全員に一方的な解雇通達が下されます。正社員になるはずだったのに、仕事を失うという窮地に立たされ愕然とするソニ。

子どもたちに楽な生活をさせたいソニ。
子どもたちに楽な生活をさせたいソニ。

 いつもソニたち非正規雇用者の味方をしてきてくれた人事チームのカン(キム・ガンウ)も、会社の方針に腹を立て、悔しさをにじませる中、シングルマザーのヘミ(ムン・ジョンヒ)は不当解雇に納得がいかないからと、労働組合を作ることを提案。勤続20年のベテラン清掃係スルレ(キム・ヨンエ)とヘミ、そしてソニを筆頭に会社側と交渉をしようということに。

 一方、携帯の新機種どころか、修学旅行に行くお金もないテヨンは、母ソニには言わずにアルバイトを始めます。でも、彼も賃金を払ってもらえないといった問題に直面します。

息子テヨンも厳しい社会の荒波にもまれていた。
息子テヨンも厳しい社会の荒波にもまれていた。

 ソニたちが連日交渉を要求するも、会社側はこれを拒否。そのため、労働組合はストライキを決行します。ソニらは一致団結して、仕事を取り戻そうと奮闘しますが、会社側はさまざまな嫌がらせをし、ついには警官隊に突入されてしまいます……。

必死に戦うソニやヘミたち。
必死に戦うソニやヘミたち。

 本作は、2007年に韓国で実際に起きた、不当解雇された非正社員たちが抗議のため大型スーパーを長期間占拠した事件を基に描かれています。韓国では非正規雇用者が全労働者の約45%を占め、その半数は女性、つまり約4人に1人の女性が雇用不安にさらされているそうです。

 誰の身にも起こり得る問題を取り上げつつ、見ると勇気がわいてくる映画「明日へ」を撮ったプ・ジヨン監督。インタビューでは、監督から働く女性への素敵なメッセージもいただきました!