こんにちは。「女子による女子のための映画DVDガイド」の映画ライター・清水久美子です。

 連続テレビ小説「あまちゃん」や、映画「舞妓Haaaan!!!」、最新ドラマ「ゆとりですがなにか」など、話題作を次々と誕生させ、日本のエンターテインメント界を牽引し続けている宮藤官九郎さん。宮藤さんが監督・脚本を担当した映画「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」が、ついに公開日を迎えました!

 映画の舞台は、なんと“地獄”。私は、試写ですでに2回観ましたが、「こんなに楽しい映画はない!」と思える、嫌なことを何もかも忘れてしまえるような、元気をもらえる作品に仕上がっています。

 宮藤さんにインタビューし、映画についてはもちろん、監督としてスタッフやキャストを率いてどのように仕事をするか、さらに働く女性たちは本作をどのように楽しめるかなど、いろいろなお話を聞いてきました。インタビューの後に作品紹介がありますので、最後までたっぷりとお楽しみください!

宮藤官九郎(監督・脚本)
1970年7月19日、宮城県生まれ。1991年より「大人計画」に参加。脚本家・監督・俳優・ミュージシャンとして活躍。2001年の映画「GO」で第25回日本アカデミー賞最優秀脚本賞、2002年のTVドラマ「木更津キャッツアイ」で平成14年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、2004年の舞台「鈍獣」で第49回岸田國士戯曲賞など受賞歴多数。そのほか主な脚本作品に、映画「ピンポン」「舞妓Haaaan!!!」「なくもんか」「謝罪の王様」「土竜の唄 潜入捜査官REIJI」、TVドラマ「池袋ウエストゲートパーク」「うぬぼれ刑事」「11人もいる!」「あまちゃん」「ごめんね青春!」などがある。映画監督作に「真夜中の弥次さん喜多さん」(2005年度新藤兼人賞金賞受賞)「少年メリケンサック」「中学生円山」がある。
スタイリスト:チヨ

――「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」を拝見しましたが、予想をはるかに超える面白さでした! 監督はこの映画を完成させ、出来上がった作品を観て、どのくらい満足されていますか?

 「映画を撮って、完全に満足してしまうと、次に何もやる気にならなくなってしまいそうですが、それでも、この映画は100%とはいかないまでも、95点つけられるくらいの満足度かな。何度見ても気持ちが変わらずに見ていられる作品って、今まであまり無かったので。本作は、地獄のセットが、きちんとそれらしく見えるかどうかが一番難しいところだったのですが、最初に思い描いていたものを大きく上回る出来栄えになっていたので、95点くらいと言えますね」

――地獄の描写を作り上げるには、たくさんのスタッフのアイデアや技術が結集されたと思いますが、特にどんなところが大変でしたか?

 「当初はブルーバックで撮影して合成するか、あるいは山の中で撮るかと思っていたんですが、それでは僕のイメージする地獄の雰囲気が出ないと思ったんです。この映画でしか表現できない地獄にするにはどうすればいいのか考えて、セットを組むことに決めました。大変だったのは、自分のイメージをスタッフに伝えることです。自分のやりたいことを貫き通すべきところは貫き通し、スタッフの知恵を借りるべきところは潔く借りる。僕にとっては、それが一番難しかった。現場に入ったら、もう迷わずに突き進んだけれど、スタッフと協力しながら、一つずつ自分の理想に近づきつつも、できないこともあった。楽しかったけれど、伝えたいことが伝わらなかった時が、精神的には一番きつかった部分ですね」

――監督は、たくさんのスタッフやキャストをまとめて、さまざまな指示をしなくてはいけないと思いますが、現場では監督としてどんなことを心掛けていますか?

 「今回の現場は、初めてご一緒する人も多かったんです。だから、自分がどういう人間で、どう思っているのかちゃんと伝えなければいけないと思いました。僕は劇団で芝居をやっているので、どうしてもそれが基準になってしまうんですが、映画の現場って、その作品のために集まって、終わったら解散しますよね。その限られた時間の中だけで一緒に仕事をするわけですから、なるべく気取ったり、虚勢を張ったり、変に取り繕ったりせずに、自分をさらけ出すのが一番いいんじゃないかと思っています。特に僕みたいに、あっちこっちいろんなことをやっている人が『片手間でやっている』と思われるのはいやだなと。そう思われているんじゃないかっていう被害妄想もいやなんですけど(笑)。なるべくそう感じさせないようにと、ちょっとそこは気を使います。あと、最近は意外と年下の人が増えてきたから、昔みたいに『僕、素人なんです』っていうのはもう通用しない感じになってきたので、それを自分でも意識するようにしています」

――なるほど。ご自分をさらけ出すというのは、具体的にはどんな風に?

 「一緒にご飯を食べに行ったりとか。でも、あまりそれをやり過ぎて、なあなあになってしまうのも良くないから、適度に。監督の悪口を言う時間も必要だから、そういう時は僕がちょっと席を外したり。移動中に、好きな映画の話をしたり、最近観た映画について話したりね」

――スタッフやキャストとのコミュニケーションを大事にされているのですね。

 「そうですね。言葉で伝えるのが8割9割だと思っています」