労災の請求は個人でも可能

 結論からいうと、出張帰りに夕食を取り、軽くお酒を飲んだ程度なら出張に随伴する行為として労災認定されるでしょう。出張先で友人と数軒ハシゴしてかなり酔った状態で終電ギリギリで電車に飛び乗った…といったケースは、業務上の行為とは認められないでしょうね。

 ちなみに過去の判例では、宿泊を伴う出張の際に宿泊施設内で同僚とお酒を飲みながら夕食を取り、酔って階段から落ちて死亡した件に対して、「本件程度の飲酒は通常随伴する行為といえなくもない」として労災認定が下りたケースがあります。

出張中に捻挫した! 労災になるの? (C)PIXTA
出張中に捻挫した! 労災になるの? (C)PIXTA

 労災に認定されそうなのに、もし会社側が「労災に当たらない」と言ってきたら、どうすればいいのでしょうか。

 通常、労災の請求は勤め先の会社が代行しますが、個人で申請もできます。労働基準監督署に行って労災保険給付の請求書をもらい、必要事項を記入して提出しましょう。

 その際、会社が労災を証明してくれなかった理由は文書などにまとめて添付するのがベター。請求書を受け取った労基署は会社へのヒアリングなどを経て、労災かどうかを判断します。労災認定が無事に下りれば、労災保険の給付を受けられます。

Q. 出張中に捻挫した! 労災になるの?

A. 労災になる

この人に聞きました
谷原 誠
谷原 誠さん
弁護士
1991年に司法試験に合格。以後、企業法務や事業再生など、数多くの案件を解決に導く。書籍や雑誌、テレビなどのメディアでも幅広く活躍中。著書に『「いい質問」が人を動かす』(文響社)などがある。

取材・文/瀬戸久美子 漫画/ハラユキ 写真/PIXTA

日経ウーマン2017年10月号掲載記事を転載
この記事は雑誌記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります