責任はどこにある?

 飲食店やホテルなどで客がモノを預けた場合の管理責任については、商法の第二編第九章「寄託」の箇所に記載があります。

 今回のケースでは、お店が客から傘の寄託を受けたかどうかが焦点になります。寄託の有無とは、分かりやすくいうと、入店時に店の人から「傘をお預かりします」などの言葉があったかどうか、ということです。

 相談者は「お店の人に言われた通りに傘立てに入れた」とのことですが、店側が「ここに傘を置いてください。預かります」と言った。その通りにしたら、傘がなくなった。災害時など、普通の注意を払っても紛失を防止できない状況であれば話は別ですが、店側が注意を払っていれば傘は紛失しなかったと考えられる場合には、店側の責任が問われるのが一般的です(商法第五九四条第1項)。

無くなってしまった傘、全額賠償してもらえるの? (C)PIXTA
無くなってしまった傘、全額賠償してもらえるの? (C)PIXTA

 一方で、入り口に傘立てがあったので、「ここに置こう」と自分で決めて傘を入れた場合はどうでしょう。客には傘立てを使う以外に、袋に入れて店内に持ち込むなどの選択肢も考えられます。この場合は、客と店との間で寄託の合意があったとはいい切れません。

 その場合でも、店側に責任があると判断されることはあります(同条第2項)。例えば、誰でも簡単に出し入れできる場所に傘立てを設置していた、店員の目の届かない場所だった、店内に傘を持ち込める状況ではなかったなどの事実があって、店側の不注意と判断されるような場合です。