「生活習慣を整える」

 次はメンタル面とともにフィジカル面を整える言葉、「生活習慣を整える」です。

 澤さんはバランスの取れた食生活に加え、20歳の頃から毎朝検温して基礎体温表を付けることを欠かしませんでした。さらに30歳の頃からは低用量ピルを服用し、体調管理をしていたそうです。

 「排卵日には靱帯がゆるみやすく、けがをしやすいので、基礎体温を見て気を付けていました」と澤さん。なでしこジャパンのチームドクターのアドバイスをきっかけに低用量ピルを飲み始めたそうですが、「試合日と重ならないように生理周期をコントロールしたり、生理による鉄分不足(貧血の原因)を防いだり、というメリットもありました。試合のパフォーマンス向上にもつながったと思います」と振り返りました。

「低用量ピルを服用していました」と澤さん
「低用量ピルを服用していました」と澤さん

 とはいえ、まだ日本では低用量ピルの服用は一般的ではありません。ましてや澤さんは一流アスリート。ドーピング検査なども含め、不安はなかったのでしょうか。

 「私がアメリカでプレーしていたときは、チームメートのほとんどが低用量ピルを服用していたので、抵抗はありませんでした。サッカーの技術不足や試合前の緊張は本人の努力次第ですが、月経周期や生理痛は努力や根性では克服できないんです。『良い対処方法があるなら使おう』という気持ちでした。ドーピング検査にも問題のないものを処方してもらっていました」(澤さん)

 澤さんが低用量ピルの服用を公表したことで、なでしこジャパンでも低用量ピルを飲む人が増えました。それまでは生理痛や試合日の生理に耐えながらプレーしている選手も多かったそうです。

 ただ、「ピル服用」というのは、とてもプライベートなこと。それに対して澤さんは、「アスリートとして必要なことをしていただけで、隠す必要はありません。自分が良いと思ったものは、みんなで共有したいですね」と今回のトークショーでも話してくれました。

 また、澤さんは出産についても触れ、「ずっと現役ではいられませんので、いつか結婚して子どもを産みたいと思っていました。低用量ピルを飲むという『そのときの自分にできること』をしていたおかげで、安心して現役生活を全うできました」と明かしました。

 「低用量ピルで排卵を抑えるのは卵巣を休ませるメリットがあるそうで、無事に出産できました。ただ、ピルは人によっては不正出血などの副作用もありますし、自分の体調を見ながら決めることだと思います。日頃から何でも相談できるホームドクターを持っておくと良いですね」(澤さん)