30代半ば、課長試験に落ちてグレる

 娘さんの理解を得て、仕事にも打ち込んでいた及川さんですが、30代半ばにはなんと「課長の昇進試験に落ちてグレました」と衝撃の告白。グレてからは、上司に何かを頼まれても突っかかるなど、相当感じが悪い人だった、と当時の自分を振り返ります。

昇進試験に落ちて、気持ちの折れ線グラフもズドーンと落ちました
昇進試験に落ちて、気持ちの折れ線グラフもズドーンと落ちました

 しかしながら、「ポジションというのは、この人に任せてみよう、試させてみようと思ってもらえるからこそ就けるもの。実力が伴わないのに自我だけが一人歩きすると、『周りは分かってくれない症候群』に陥ってしまう。そのときに私もいろんな本を読んだりして初めて、己の実力のなさが分かったんです。あのとき会社が私を不合格にしたのは、大正解だった」とも分析します。

 ふてくされている様子を叱責してくれる人の存在もあり、それからコツコツと研鑽(けんさん)を積んだ及川さんは、1年後の昇進試験に合格しました。しかも、目標としていた課長以上のエリアマネージャーという大役を任されることになります。

女性が輝いて働くための6つのこと

 続けて及川さんは、女性が自分の鎖を解いて、もっと自分らしく働くための6つのキーワードを教えてくれました。そこには、これ以上ないほどのモチベーションダウンを経験し、見事に挽回したからこその気付きがありました。

1 できないことを数えるな、できることを把握せよ

 ポーラは全国約4600カ所の販売拠点を持ち、ビューティーディレクターと呼ばれる販売員は約4万2000人にも上ります。及川さんは取締役の立場としてたくさんの女性と接していますが、「自信満々に見える方でも、まだまだ自己評価が低いことが多い」と指摘。自分が目指すロールモデルを見つけたはいいものの、その人と比較して減点主義で自己評価をしてしまう傾向があるといいます。

 できないことを挙げて減点するのではなく、「自分が既に手にしているものや、できることを見てほしい。できない分は伸びしろなので、そこを成すためにはどうしたらいいかを考えて足していけばいいんです。どうしてもできなかったら誰かに助けてもらったっていい」と、及川さんは優しく自己肯定の大切さを教えてくれます。

2 「叱られる」と「大失敗」は経験値アップの大チャンス

 失敗がないということは、経験を積んでいないことと同じ、と断言する及川さん。ある本を引用して、成功の反意語は失敗ではなく「妥協」である、とも教えてくれます。

 「失敗を学ぶからこそ成功があるわけで、諦めないからこそいつかは成功するんです。失敗したら周りのせいにはせず、なぜ失敗したのか、もっとやりようはなかったのかを真剣に考え抜いたときに道が開けるのだと思います」と、力強い言葉をくれました。