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舞台は世界! 日本を飛び出して見えたこと

周囲に「無理、やめろ」と言われ続けた36歳の研究者(2/2)

2018年7月12日

マナティーを研究 菊池夢美さんインタビュー

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相談した先生全員が否定… マナティーの研究なんて無理!

 沖縄から帰ると、私はすぐにマナティーについて調べ始めました。一目ぼれした相手のことって、知りたくなるでしょう? ところが、大学の図書館にはマナティーに関する本がありませんでした。外国の動物なので、書店で洋書も探しましたが、売られていません。国内の本をすべて所蔵している国立国会図書館にも出掛けたのですが、イルカやクジラにあるような関連書が、マナティーには一、二冊しかなかったんです。

 そもそも本がないんだと気付いた私は、科学雑誌に載った論文を当たることにしました。マナティーというキーワードで引っ掛かるものはすべて、化石系の論文まで読みました。そうするうちに、私は、マナティーの体のつくりにはさほど関心がなく、自然の中でどう過ごしているのかを知りたいんだということが、はっきりしたんですね。

「科学雑誌を読むなんて、その時が初めてでした。論文は英語で書かれ、専門用語もたくさん。一語一語辞書で調べながら、全訳して読んだんですよ」

 「これを研究したい。卒論のテーマにしたい」と思ったけれど、何をどうしたらいいのか、全く分かりません。そこで、学科内の先生方に相談して回ったんです。すると先生は全員がこう言いました。「無理、無理。マナティーなんて日本にいないし、希少動物はそう簡単に手を出して研究できるものじゃない」。

 「いやいや、あなたには無理でも私には無理じゃない」と、私は思っていました。だって、無理とおっしゃる先生方は、やったことがないんですから。

 そんなある日、私は、海洋生物資源科学科の先生に東大の研究員の方がこんな相談をしているのを小耳に挟みました。「美ら海水族館でマナティーの行動実験をする人を探しているのですが、誰かいませんか?」。もちろん手を挙げました! 読んでいるかと聞かれたマナティーに関する論文もすべて読んでいたので、すぐに採用が決まったんです。

 こうして大学3年の春、私は沖縄美ら海水族館で、マナティーの実験をすることになったんです。

受け入れてくれる研究室が一つもない

 その実験は、マナティーが水中でどれだけ障害物を認識できるかを調べるものでした。当時、沖縄の海で、マナティーと同じカイギュウ目のジュゴンを漁網で混獲してしまうことが問題となっていたんですね。そこで、ジュゴンが水中で漁網を認識できるのかを調べることになったのですが、希少なジュゴンでの実験はリスクが高いため、それよりは飼育数の多いマナティーで調べることになったんです。

 水族館の開園前と閉園後、私は、水槽に沈めた安全性の高い網状のプラスチックに、マナティーがどれだけぶつかったり避けたりするかを、ひたすら記録しました。

「当時の私です。エサやりなどの世話もできたし、その行動実験を任せてもらえてとても幸せでした!」

 一方、大学では大きな問題が起きていました。3年生になるとどこかの研究室に所属しなければいけないのですが、私を受け入れてくれる先生が一人もいなかったんですよ。卒論のテーマはマナティーと決め、その指導は、沖縄での実験を紹介してくれた東大の研究員の方がしてくださることになっていたので、大学の研究室には籍を置かせてもらうだけでよかったのですが……。

 確かに、同級生には私のような人はいなかったけれど、「無理だ」「やめろ」「受け入れない」なんて、先生方も学生相手にちょっとひどかったと思います。最終的には学科主任の先生に頼んで、やっと受け入れてもらったんです。

「美ら海水族館での実験を発展させてまとめた卒論は、数年後、科学雑誌に載りました。誰もやっていない内容で、有意義な結果だったと思います」
Profile
菊池夢美(きくち・むみ)
アマゾンマナティー研究者。1981年東京・杉並生まれ。東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了、博士(農学)。25歳でブラジルに渡り、国立アマゾン研究所と共同で、アマゾン川に生息するアマゾンマナティーの行動研究を開始する。現在は京都大学野生動物研究センターのプロジェクト研究員として、年の4分の1をアマゾンで暮らし、密漁などから保護したマナティーを自然に戻す活動にも参加。一般社団法人「マナティー研究所」代表。
南米のアマゾンで希少動物マナティーを研究
京都大学野生動物研究センタープロジェクト研究員 菊池夢美さん
第1回 周囲に「無理、やめろ」と言われ続けた36歳の研究者(この記事)
第2回 研究者・菊池夢美 願いがかなった直後に襲った出来事(7月19日公開予定)
第3回 一度は転職も考えた 野生動物研究者の、諦めない理由(7月26日公開予定)

聞き手・文/金田妙 写真/清水知恵子

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