なんだか気になる、ルワンダ人のガテラ
部屋に入ると、床にマットレスが敷いてあったので一瞬ひるんだけれど、それでもなんだか大丈夫な気がして、そこで彼と一緒に友達を待つことにしたんです。話したことはよく覚えていませんが、彼がルワンダ人だということや、帰国前に東アフリカを旅するつもりだったので、ルワンダがどういう国なのかを聞いたりした記憶はあります。でも、私もスワヒリ語がうまくなかったし、交わした言葉はわずかでした。結局友達は戻ってこなくて、私は寮へ帰ったのです。
そんなに話もしていないのに、なんだか気になる人っていませんか? 好きとか嫌いとかじゃなくて。ルワンダ人のガテラは、私にとってそんな存在だったようです。当時の日記にも、「この人が何を考えているのか知りたい」と書いてあるから。
彼の故郷のルワンダは、ヨーロッパ諸国の植民地政策のために国民が民族に分けられ、支配するために国民を混乱させ、対立をあおり、植え付けられた憎しみの感情で、同じ国の人々が争うという悲劇が起こっていました。ガテラはその紛争を避け、ケニアに来ていたのです。彼の部屋には、生活のために売っているというルワンダの木彫りがたくさんありました。その中に美しい女性像があったので、私は、「これ欲しい。まけてよ」と甘え声で頼んだんです。それまでに出会ったアフリカの男性なら、日本の若い娘がこう言えばすぐにまけてくれたから。でもガテラは、「これは商売だ」と一切まけなかったんですね。女の甘い言葉などに惑わされないそんな姿勢も、とても印象に残りました。でも会ったのはそれきり。やがて私は日本へ帰ることになったのです。
*第2回に続く
ムリンディ/ジャパン・ワンラブ・プロジェクト ルダシングワ真美さん
第1回 元派遣社員がアフリカへ 義肢を配る活動を始めるまで(この記事)
第2回 ルワンダ人の彼と職探し…その後起きたルワンダ大虐殺 5月24日公開予定
第3回 ルワンダで義肢造り「素晴らしい人と思われたくない」 5月31日公開予定
聞き手・文/金田妙 写真/清水知恵子