プロフェッショナルのチーズ専門家「フロマジェ」として活躍している村瀬美幸さん。もともとは、ANAの客室乗務員だった。子どもの頃から世界に憧れ、夢かなえた職を手放した理由は、自信のなさだったという。自分の存在意義に悩み、自問自答を繰り返しながら、興味に導かれてたどり着いたのがチーズの世界。「日本人がチーズの何を知っているの?」という完全アウェーで世界一のタイトルを手にするまで、はじける笑顔の裏に何があったのだろう。
第1回 夢の職に就けた…けど自信がない キャリア捨てたCA
第2回 CAからチーズのプロへ「世界2位では駄目と知った」(この記事)
第3回 「何になるの?」と言われていたお稽古事で、世界一に 4月26日公開予定
今飛び込まなかったら、チャンスは二度とない
チーズプロフェッショナルの資格も無事に取れて、田崎さんのワインスクールで半年くらい学んだ頃、私はチーズクラスの先生のお手伝いを始めました。ちょっとしたパーティーでレクチャーを担当したり、司会をしたり。それが耳に届いたようで、ある日田崎さんに聞かれたんです。「最近教えているんだって?」「いえいえ、パーティーコンパニオンみたいな盛り上げ役です」。その時はそれで終わったのですが、さらに半年ほどたった時、田崎さんにこう誘われたんです。「今学んでいるコースが終わったら、ワインの講師をしてみませんか?」
後日この話を聞いたワイン仲間は、「すごろくのゴールだね」なんてからかいましたが、その時の私はこう思っていました。「世界一のソムリエが主宰するスクールで講師をするなんて、看板が大き過ぎる。趣味だけで習っていたなんの肩書もない私が、ここへ習いに来る人に教えていいのかな……」。でも、こう思える自分もいたんです。「せっかく声を掛けていただいたのに、今飛び込まなかったら、こんなチャンスは二度とない。『もう少し勉強するので、1年後にお願いします』と断ったら、またの機会はもうないよね!」
そして私は、怖いもの知らずで、そのお話をお受けしたんですよ。
私が受け持ったのは、半年間20回のレッスンで14万円というコースでした。決して安くない受講料を払っている生徒さん40名に、ワインについて教えるんです。たいへんなプレッシャーでした。週に一度の授業のために毎日準備をし、それでも当日、緊張で震えてくるんです。コースが終了した時は、駄目ならクビだろうと覚悟していたのですが、結局10年間講師として働き、最後はスクールの支配人にまでしていただいたんです。
ただ、講師をしながらも、私はどこか引け目を感じていたんです……。