田崎真也さんの下でソムリエになる

 あれは1993年。全日空の社内でソムリエが4名誕生しました。ソムリエという職業を知ったのも、その時が初めて。CAでもワインの専門家になれるのかと興味を持った私は、同期を誘って社内にあったワインクラブの講座に通い始めました。講師は、あの田崎真也さんでした。

 田崎さんは、1995年に日本人として初めて世界最優秀ソムリエになった方ですが、当時はまだホテル西洋銀座で働くソムリエでした。ちょうど私たちが習っている最中に、世界大会で優勝したんですね。「先生が世界一になった! 私って、すごい人に習っているんだ」と、びっくりしたものです。そんな田崎さんのおかげで、私も無事にソムリエの資格を取ることができたんです。

 資格は、取ることがゴールではありません。運転免許も免許を取ってからが楽しいように、ソムリエになった私は、ワインの世界が大きく広がるのを感じました。フライト先で食事をする際も、レストランのワインリストが読めるし、料理に合うワインも分かるようになって、食事がますます楽しくなりました。そんなワインをさらに勉強したくて、私は田崎さんの主宰するスクールに通い始め、会社を辞めて時間ができると、ますますワインの勉強にのめり込みました。

 そのスクールには、ワインと切っても切れないチーズのクラスもありました。それまでチーズは、お料理教室でちょっと使ったり、CA時代に機内でお客様にお出ししたりした程度でしたが、季節ごとに種類が変わる面白さを感じていたんです。でも、きちんと勉強したことはなかったので、よい機会だと思ってチーズクラスも受講し始めました。

「学び始めたら、チーズの世界の奥深さに驚きました」
「学び始めたら、チーズの世界の奥深さに驚きました」

 そうして勉強するうちに、ある時こんな話を耳にしたんです。「近々チーズの協会が設立されて、チーズプロフェッショナルの資格が取れるらしい」。じゃあ取ってみようかなと、軽いノリでチャレンジしたのですが、あれが世界一のフロマジェになる第一歩だったのかと思うと、人生は分からないものです(笑)。

*第2回に続く

◆フロマジェ、ザ チーズルーム アカデミー副校長 村瀬美幸さんインタビュー
第1回 夢の職に就けた…けど自信がない キャリア捨てたCA(この記事)
第2回 CAからチーズのプロへ「世界2位では駄目と知った」 4月19日公開予定
第3回 「何になるの?」と言われていたお稽古事で、世界一に 4月26日公開予定

聞き手・文/金田妙 写真/稲垣純也