現在ラオスのビエンチャンで暮らす安井さん。「ラオス山の子ども文庫基金」を立ち上げ、子どもたちに良質な絵本を届け、モン族に伝わる貴重な民話を後世に残そうと奮闘中だ。そのきっかけは、20代前半でNGOのスタッフとしてタイの難民キャンプへ出掛けたことだった。わずか2週間の滞在が、その後の彼女の人生を変えていく。やりたいことだけ選んでいったら今があるという安井さんに、仕事、そして結婚のお話まで、たっぷりと伺った。

◆モン文化研究・図書館活動家 安井清子さんインタビュー
第1回 就活を辞めてラオスへ! 移住し図書館を設立した女性
第2回 組織は私に向かない―ラオスで図書館造りに夢中の日々
第3回 43歳の私に年下のラオス人がプロポーズ その結果…(この記事)

新居に、知らない他人がたくさんいる!?

安井清子(やすい・きよこ)
モン文化研究・図書館活動家。1985年にNGOのスタッフとして、タイのラオス難民キャンプでモン族の子どもたちのための図書館活動に携わって以来、現在もラオスにて子ども図書館の活動に関わる。また、モン族の口承文化を記録・継承する活動も行っている。「ラオス山の子ども文庫基金」代表、ビエンチャン在住。著書に、「空の民(チャオファー)の子どもたち」(社会評論社)、「ラオス 山の村に図書館ができた」(福音館書店)など。

 図書館を造り始めて2年目のある日。ラオスの首都ビエンチャンで、私は無言劇を演じる人形劇団の公演を見に行きました。日本人の友人がそれに関わっていて、誘われたんです。公演後の飲み会にも参加させてもらったところ、その劇団のメンバーの一人の男性と、気付いたら、なんだか楽しく一緒に踊っちゃたんですよ(笑)。

 彼は私より14歳も若いし、私はそのとき43歳で、結婚なんて考えもしませんでした。プロポーズされたときはびっくり! ラオス人は楽観的というか、深く考えない人が多いんですね(笑)。私はといえば、「どうなるか分かんないけど、断る理由も今はないな」と思い、駄目なら駄目でと思いながら結婚に踏み切ったんです。

 それからがもう大変! 初めはビエンチャンで借家暮らしでしたが、「土地を買って家を建てよう」と夫が言い出すと、故郷の村から親や親戚一同がやってきて、住み込みで家を建て始めたんです。しかも設計図がなく、建てる前日になって「平屋の半分だけ、2階に上げるっていう手もあるな」と義理の父が言い、家の形が決まったほどです。そうして出来上がったら、寝室が二つあるんです。夫に聞くと、「ぼくには義兄弟みたいな友達がいて、彼を放っておくわけにはいかない」と言うんですよ。なんと、その男性も一緒に住むことになっていたんです!

 それだけでも驚きなのに、ある朝6時ごろ起きて階下に行くと、人が20人くらいいるんです。みんなその男性の親戚で、「ごはん作ってるけど、あんたも食べる?」ですって。「いったい誰の家なのよ!?」と夫に怒りをぶつけると、「だっていきなり来たんだもん」とケロッとしていました。

 ラオスに関わって長いですけど、結婚してみて、「えー! ラオス人ってこうなの?」と驚くことがたくさんありました。