現在ラオスのビエンチャンで暮らす安井さん。「ラオス山の子ども文庫基金」を立ち上げ、子どもたちに良質な絵本を届け、モン族に伝わる貴重な民話を後世に残そうと奮闘中だ。そのきっかけは、20代前半でNGOのスタッフとしてタイの難民キャンプへ出掛けたことだった。わずか2週間の滞在が、その後の彼女の人生を変えていく。やりたいことだけ選んでいったら今があるという安井さんに、仕事、そして結婚のお話まで、たっぷりと伺った。

◆モン文化研究・図書館活動家 安井清子さんインタビュー
第1回 就活を辞めてラオスへ! 移住し図書館を設立した女性(この記事)
第2回 組織は私に向かない―ラオスで図書館造りに夢中の日々 3月22日公開予定
第3回 43歳の私に年下のラオス人がプロポーズ その結果… 3月29日公開予定

たまたま見た人形劇で、就職先を転向

安井清子(やすい・きよこ)
モン文化研究・図書館活動家。1985年にNGOのスタッフとして、タイのラオス難民キャンプでモン族の子どもたちのための図書館活動に携わって以来、現在もラオスにて子ども図書館の活動に関わる。また、モン族の口承文化を記録・継承する活動も行っている。「ラオス山の子ども文庫基金」代表、ビエンチャン在住。著書に、「空の民(チャオファー)の子どもたち」(社会評論社)、「ラオス すてきな笑顔」(NTT出版)など。

 私が海外へ出たのは、タイの難民キャンプでの支援活動が最初でした。でも、難民支援に興味があったわけではなく、それどころか、東南アジアに対する関心すらなかったんです。学生時代は子どもの本に関わる仕事に就きたくて、出版社の就職試験を受けていたんですよ。子どもの頃から児童文学や絵本が大好きだったので。

 きっかけは、就職活動の最中に見た、「おはなしきゃらばん」というグループの人形劇公演でした。おはなしきゃらばんは、子どもたちへの読書推進活動の一環として、人形劇で子どもたちにお話を伝えている教育財団でした。「面白そう! 私もやってみたい!」と思い、「きゃらばんに就職させてもらえますか?」と聞くと、「卒論を書いたらおいで」と言われ、その通りにしたんです。出版社のほうは、面接まで進んでいたのですが、「他社は考えてないの?」と聞かれて正直に答えてしまい、見事に落とされました。当たり前ですよね(笑)。

 おはなしきゃらばんは海外でも公演をしていて、私が就職した年は、12月にタイのカンボジア難民キャンプへ行くことが決まっていました。「タイなんて行ったことないし、難民なんて意識したこともないけど、参加したいな」と思いました。でも私は一番の下っ端です。そこで、タイ人の留学生を見つけてこっそりタイ語の勉強をし、「私、タイ語がしゃべれます!」とアピールして、連れていってもらったんです。

 難民キャンプの印象は強烈でした。きっとかわいそうな子どもがいるんだろうなと想像していたのですが、状況は厳しいけれど、みんなとにかく元気で、人形劇を見つめる目がキラキラしていました。「なんなんだろう、このエネルギーは!?」と、かえってショックを受けました。2週間の仕事を終えて帰国した後も、事あるごとに思い出していました。

 ちょうどその頃、曹洞宗ボランティア会、現在のシャンティ国際ボランティア会(SVA)という団体が、タイの難民キャンプで図書館を造ることになり、その活動を手伝うために、おはなしきゃらばんから1名出向させるという話が持ち上がったんです。多分、「もう一度行きたい」とよく言っていたからだと思いますが、それに私が指名されたんです。