次々と起こるYouTuber発事件

 このような事件を起こすYouTuberは彼だけではない。

 2018年1月、全豪オープンテニスでニック・キリオス選手の試合中に、大声を出して進行の妨害をした男がいた。男はコートから追い出された直後にYouTubeに動画を投稿し、「テレビでオレのことを見たかもしれないが、ちょうど退場させられたところだ。これまでの人生で最高のことをやった。楽しんでくれたらうれしい」と語っていた。

 実は男はチャンネル登録者数が10万人いるYouTuberで、電車の中で乗客の足を突然触ったり、図書館でエアホーン(警笛)を鳴らして来訪者を驚かしたりするなど、他人をドッキリさせるいたずら動画を多数投稿していた。

 このような例は国内にもある上、違法行為に及んだものも多い。2017年8月には、薬物と見せかけた白い粉を警察官の前に落として逃走する「覚醒剤 いたずらドッキリ」という動画をYouTubeにあげた男がいた。この動画は物議を醸しただけではなく、その男と動画撮影者の妻は偽計業務妨害の疑いで逮捕されている。

 2016年12月にも、ヤマト運輸営業所にチェーンソーを持って乗り込んで従業員を脅す動画を投稿した男が、2017年1月に暴力行為等処罰法違反容疑で逮捕されている。男は、配達員が自宅に代引きの荷物を届けようとしたが、本人が不在で家族も受け取らなかったため、荷物を持ち帰ったことに腹を立てて犯行に及んだ。犯行だけでなく謝罪の様子も動画に投稿しており、「面白い動画が撮れるのではないかという気持ちがあって撮影した」という。

 「YouTubeに面白い動画を載せたい」という理由で、一部のYouTuberの行動が過激化してしまっているのだ。

広告収益プログラムの厳格化が逆効果も

 ローガン・ポール氏をはじめとした不適切動画の増加を受け、Googleは2018年1月より、広告収益のプログラム(YPP)への参加を厳格化することを発表している(※)。チャンネルの過去12カ月間の総再生時間が4000時間、チャンネル登録者数が1000人に到達しているという一定の実績が条件となっている。



 登録者数を増やそうと過激な行動や炎上をあえて起こすYouTuberはこれまでにも何人もいた。そのような行動で目立ち、フォローしてもらいたい、動画を視聴してもらいたいと考えたからだ。YPPの厳格化は、そのようなYouTuberの淘汰を狙ったものと考えられる。

 YPPが変更されることによって、実績のない新規参入組の行動は抑えられるかもしれない。しかし、既に一定数以上のチャンネル登録者数と再生時間を獲得しているYouTuberの行動は規制できない。むしろローガン・ポール氏のように、公序良俗に反する行動を取ってもアカウント停止処分などにはならず再生数を稼いでいる例もある。

問題ある投稿によって炎上してしまうケースは枚挙にいとまがない (C) PIXTA
問題ある投稿によって炎上してしまうケースは枚挙にいとまがない (C) PIXTA

 これまでにも、問題ある内容をTwitterなどのSNSに投稿してしまい、炎上した人は多かった。彼らの多くは、友達にうけるつもりで軽い気持ちで問題投稿をしてしまっていた。ところがローガン・ポール氏のようなYouTuberたちの行動は動機が全く異なる。収益のために、あえて問題ある過激動画を投稿している、モラルに欠けた確信犯といえるのだ。

 YouTubeを好み、毎日のように見ている小中学生は多い。そのような子どもたちが悪質な動画を見たり、まねしたりすることがないよう、周囲の大人たちはしっかりとモラルを教えたり、子どもが見ている動画を確認するべきだろう。

文/高橋暁子 写真/PIXTA