「働き方改革」と言っても、会社や人事の変革を待っていてもらちが明かない。会社が変わる前に自分が変わっていかないと、一番先に割を食うのは、真面目に創意工夫をしながら仕事をしている私たち――。この連載では、働き方改革のコンサルティングを行っている池田千恵さんが、明日からすぐに実践できる仕事術・時間術・コミュニケーション術などを紹介していきます。

絶対に時間通りに終わらせる執念を利用しよう

必ず時間通りに帰る! そのためには、「やらないことを決める」のが大切 (C) PIXTA
必ず時間通りに帰る! そのためには、「やらないことを決める」のが大切 (C) PIXTA

 最初に個人的な話から入りますが、私は子どもがいない人生を送ると思っていました。結婚して10年近くたっても授からなかったためです。結果的には40歳で授かり出産し、まもなく2歳になる息子を育てながら仕事をしていますが、仮に将来子どもがいない人生を歩んだとしても、働くママの時間管理方法は参考になると感じていました。そのため、妊娠するずっと前の2011年ごろから「時間美人」をテーマに働くママに取材を続けています。

 なぜなら、働くママは絶対に死守しなければいけないデッドラインを毎日掲げながら、生産性を高めていかなければどうにもならない状態で仕事をしているからです。周囲で働くママたちの「絶対に終わらせる」執念と工夫、集中力を維持する能力は素晴らしく、その極意を働くママ以外にも伝えて採用できたら、生産性は格段に上がると考えたからです。

 今回は私の取材対象が働くママだったためこのようなタイトルとなっていますが、もちろん、働くママに限らず、積極的に家事育児に関わっているお父さんや、介護などの理由で時短の必要があり、生産性を上げる工夫をされている方もいらっしゃいます。

 「子どもがいないから関係ない」と思わず、彼ら/彼女たちの仕事ぶりをじっくり観察してみると、「じぶん働き方改革」のヒントがあふれています。さっそく詳しく見てみましょう。

働くママの辞書には「とりあえず」と「念のため」は存在しない

「仕事は、完了するために割り当てられた時間に応じて複雑なものへと膨れ上がっていく」

 これは「パーキンソンの法則」といわれるものです。あなたも心当たりがありませんか? 締め切りまで2週間もあり、ああでもないこうでもないと練り上げた企画よりも、「2時間で出して!」と言われてやっつけで作った企画のほうが評判がよかった、なんてことが……。やるべきことは締め切りが長ければ長くなるほど膨らんでいって、やる必要もないことをこねくり回し、時間をかけてしまうことになるのです。

 働くママパパや、家族の介護をしていて残業がほとんどできない人たちには、そもそも「時間がある」という状態がほとんどありません。

●限られた時間の中で「今」自分にしかできないことは何か?
●子どもの世話をしながらできる作業はないか?

 これらを瞬間瞬間で判断する訓練を毎日しているわけですから、スキルもどんどん上がってくることは想像に難くないでしょう。

 では、具体的にどんな軸をもって働くママたちは物事を決めていくのでしょうか。参考になりそうな割り切りポイントをこれから紹介します。

 ポイントは3つです。

1.心から大切に思っていないもの/惰性で続けていることはバッサリと切る
2.やったほうがいいことより、やるべきことを優先する
3.プライベートと仕事を分けて考えない

 順番に説明します。