働き方改革のコンサルティングを行っている池田千恵さんが、明日からすぐに実践できる仕事術・時間術・コミュニケーション術などを紹介していく本連載「じぶん働き方改革」。今回は、プレゼンや会議の資料を作成するときに陥りやすい傾向について、解説します。

よく聞く「PDCA」、ホントに回せてる?

知ってはいるけど、実行できているかというと… (C) PIXTA
知ってはいるけど、実行できているかというと… (C) PIXTA

 「PDCA」という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善)の頭文字を取ったもので、業務改善のためによく取られる手法です。しかし、この言葉ほど、「知っている」と「やっている」の乖離(かいり)が激しい言葉はないと私は感じています。

 というのも、「仕事が終わらない」「業務改善ができない」「忙しくて改善の余地なんてない」という方の多くが、そもそもPlan(計画)を立てる前の準備や情報収集に多大な時間をかけ、Planまでたどり着かずに、Planを依頼された先の上司や取引先に「あの件どうなった?」と進捗を確認されてしまうからです。

 実は私自身も、「あの件どうなった?」と言われる側でした。準備や情報収集だけで3カ月もの時間を無駄にし、何の結論を出すこともできなかった経験があります。だからこそ、準備や情報収集で貴重な時間を費やし、結局何もできないでいる人たちを「もったいないな」と感じています。

準備だけで時間切れになった私の末路

 過去の苦い経験とは次のようなものでした。

 大学3年のとき、自ら所属するマーケティングのゼミで、日本1号店を出したばかりだったカフェチェーンをテーマにチームを組んでプレゼンをすることになりました。

 当時は「CS経営(顧客満足度を高めるための仕組みづくりを計画的に行う経営)」が花盛りの中、その会社は顧客満足は当然とした上で一歩踏み込み、従業員やパートタイマーを顧客と同等かそれ以上に大切にし、顧客だけでなく従業員までもマーケティング対象として見据えた、当時では新しい経営手法を導入していました。また、環境負荷を軽減したり、倫理的な調達を心掛けたりといった社会貢献プログラムを創業当初から積極的に展開していました。

 その素晴らしさや先見性を伝えたかったのですが、それをどうまとめてよいか分からず、関連の本を集めて読み込み、資料をひたすら集めるということに3カ月もかけてしまい、肝心のプレゼンに全く間に合わなかったのです。ゼミのOBである先輩や教授の前での勝負プレゼンだったのに、前日徹夜で無理やり作ったカンペを棒読みするはめになりました。しかも、カンペの文字が小さ過ぎてプレゼン途中に自分でもどこをどう読めばよいか分からなくなり、内容も支離滅裂。論理破綻を起こしてしまいました。今思い出しても恥ずかしく、消え入りたいような経験でした。

情報収集する前にまずはコレをしよう

 プレゼンの構成、準備不足など、さまざまな失敗要因はありましたが、一番まずかったのは、ゴールを「こうではないか?」と想像することをしないまま、やみくもに資料だけを大量に集め、「これを読み込めば答えは見えるはず」という意識でいたことでした。

 今回プレゼンを例に挙げましたが、「じぶん働き方改革」にはこのワナはいつもつきまといます。出社するとたいてい、自分で主体的に動くことなく仕事が振られてきます。その流れに従っていくと、身体だけ動かしてなんとなく考えているフリができてしまいます。手を動かしていたほうが「仕事をしている」実感を得ることができて自分でも気持ちが良いのです。情報収集もその一つです。情報を集めている間は忙しいし、仕事が前に進んでいる感覚を持ててしまうから危険なのです。作業に没頭してしまい、実は何も前に進んでいない、という環境をなるべく排除しましょう。

 そのためには「きっとこうなるはずだ」をまず考えて、その結果を補足するためのデータはないかを探す、という順番で仕事をするよう意識していきましょう

 そのための対策は大きく3つです。

1.資料を集めようと思ったとき、5分でいいので一度止まる

2.「分析 → 結論 → 提案」の順番でなく、「提案 → 分析 → 結論」の順に考えるクセをつける

3.分析のやめ時を決めておく

 順番に説明します。